Compass

№99    

「Mile End Bar」


 

「星条」

 

久しぶりに、西麻布へ向かう。

 

乃木坂から青山墓地の横を過ぎ「星条旗通り」へ。

 

通りの名は青山公園下にある米軍の準機関誌

 

「星条旗新聞」が面することから来ている。

 

夜にもなると人通りもそれほど多くは無いが

 

こっそりと通いたい隠れ家店達の明かりが灯る。

 

止まり木で麻婆豆腐を食べましょうと誘いがあり

 

本格バーで食べる麻婆豆腐に大変興味をそそられる。

 

向かうは開店10年目を迎えた「Mile End Bar」。

 

本格的なバーにもかかわらずチャージが無い。

 

深夜まで営業しているのも嬉しいお店である。

 

通りに面するテラスの向こう側ガラス越しには

 

黒色を基調としたやや高めのバックバーに並ぶ

 

シングルモルトをはじめとしたボトル達の姿、

 

そしてその前に立つバーテンダーと語らっている

 

お客さんの背中が見える。お酒達が自分を手招く。

 

お店の主は田部和広氏。

 

ホテルニューオータニからサービス業の道へ。

 

湯島の名店「EST!」オーナー渡辺昭男氏に憧れ

 

調酒業界へ身を投じ、今や日本を代表するであろう

 

名バーテンダー毛利隆雄氏にバーテンダーを学んだ。

 

Mile Endという店名から想像出来る方もいると思うが

 

田部氏は世界中を旅するバックパッカーでもある。

 

かつて六本木の名店のチーフバーテンダーだった頃、

 

モルトに魅了され渡英。エディンバラにある名門大学

 

ヘリオット・ワット大学にて醸造学を学んだ経歴を持つ。

 

知識と技術の両面を兼ね備えたバーテンダーである。

 

 


「本場」

 

同じ西麻布に2店舗目となる「霞町 嵐」を開店し

 

2店舗の草鞋を履く現在でもアジア各国などへ

 

フットワークも軽く旅立つこともしばしばである。

 

もちろん中国での本場中華料理を目と舌で味わっており

 

その田部さんが予約制で作るという四川麻婆豆腐を

 

味わえるというのだから食べない手はないだろう。

 

お待ちかねの麻婆豆腐が丼にて登場。横にはライス皿。

 

視覚からもその本格さがひしひしと伝わってくるのだが

 

花椒(四川山椒)の香りが鼻孔をくぐり食欲を誘う。

 

スプーンに乗せ舌の上へ運ぶと豆板醤や甜麺醤に加え

 

豆鼓の味わいが複雑で深いウマ辛さを引き出している。

 

下手に中華料理店の麻婆豆腐を食べるよりも遙かに旨く

 

これならライスもガツガツ何杯もイケてしまう。

 

この一皿をバーカウンターで食べるというというのは

 

何とも奇妙な感覚で、昔よく通った札幌ススキノにある

 

ジャズ喫茶の麻婆ライスの味を思い出し懐かしむ。

 

食後は少し間をおいてから元ホワイト&マッカイ社の

 

取締役であったスチュアート・マックダフ氏が創設した

 

マックダフ社ゴールデンカスクのボウモアを所望。

 

今回味わった1993-2004はスモーキーな香りも程よく

 

ボウモア味がワッと口いっぱいに広がる一杯であり

 

コストパフォーマンスにも優れたウイスキーといえる。

 

田部さんをはじめスタッフ陣は洋酒への造詣も深く

 

初心者の方でも気軽に相談してみると良いだろう。

 

オリジナルカクテルも実に遊び心に溢れていそうな

 

メニューが並ぶので次回はカクテル攻めと行きたい。

 

 


「Mile End Bar」

 

東京都港区西麻布1-4-41

 

麻布ファースト

 

03-3401-0330

 

最寄り駅

 

地下鉄乃木坂駅より徒歩10分、六本木駅より徒歩15分

 

お店一口メモ・・・

 

お客さんの層は20代からと幅広く、

 

女性のお客さんがお一人でカウンターに

 

座っている姿もしばしば見かけます。

 

大変リーズナブルなのでモルトウイスキーを

 

勉強したい学生さんなどにもオススメです。

 

現在、田部さんは2店舗目の「霞町 嵐」を

 

中心にお仕事なさっていらっしゃいますので

 

麻婆豆腐(完全予約制)をご希望の方は

 

あらかじめ電話にてお問い合わせ願います。

 

※大変残念ながらご閉店なさいました。