Ｃｏｍｐａｓｓ
№９１
「Ｔｈｅ Ｂａｒ ＣＡＳＡＢＬＡＮＣＡ」
「内外」
「やっぱり港町のバーはええなぁ。」
私の隣に美人の女性とご一緒にお酒を愉しむ
バーに通い慣たオシャレで気さくな神戸からの
中年男性のお客さんが私の方を見て微笑んだ。
「私も神戸のバーへは何度か足を運んでおりますが
東京で言えば銀座、大阪神戸で言えばキタやミナミとは
ひと味違って気のせいなのは分かっているのですが
昔は船員達が集まった港町のバーというのは
店内がどこか潮風の香りがしてきそうな雰囲気が
私は大好きです。北海道の釧路や小樽でも
同様の経験が味わうことが出来ますよ、きっと。」
「あなたはお若いのに色々なバーを知ってはるんやね。」
こんな感じで初めてお会いしたお客さんとも会話が弾む。
そんな我々の目の前ではサクッサクッと小気味よい音で
氷塊を包丁で切るとても端正な顔立ちのバーテンダー。
片野靖雄氏。新潟ご出身の片野さんは上京後
公務員として働いていた経歴の持ち主でもある。
「この前仕事で新潟の長岡まで行ってきたんだけど
長岡小嶋屋本店でへぎ蕎麦食べてきたんですよ。
もちろんお酒も忘れずに。厚焼き卵と〆張鶴の冷や」。
へぎ蕎麦とはご存じの方も多いと思うが新潟名物、
海藻（ふのり）をつなぎに使った喉越しの良い蕎麦で
方言「へぎ」の語源である「剥ぎ板」による木製の
四角い容器に蕎麦を盛り付けるので「へぎ蕎麦」と
呼ぶようになったとされるシコシコ感ある蕎麦だ。
「実は私、へぎ蕎麦って食べたこと無いんですよ。
私は下越の人間でしてうちの両親も食べたことが無く、
お客様に美味しいへぎ蕎麦のお店を逆に教えて頂きます。
へぎ蕎麦は大地震のあった中越が中心的だそうです。
そうそう、下越と上越とでは同じ新潟県内なのに
方言が異なり言葉が多少通じない時さえあるんですよ。」
そんな感じでバーの内と外の会話も楽しく進んでいく。
「研修」
このお店のオーナーは山本悌地氏。高知市で行われた
日本バーテンダー協会主催２０００年全国技能競技大会
にて見事総合優勝なさった実力ある若手バーテンダー。
現在は横浜駅のすぐそばに２店目のレストランバーを
オープンした関係で新店舗のカウンターに立っている。
実は山本さんとはお互い札幌にある実家がとても近く
出身高校も何とお隣さん同士ということで意気投合。
もちろん年齢で言うと山本さんが私の大先輩にあたる。
カサブランカでは毎年スタッフ研修を兼ねて山本の
実家のある札幌へ行く。初日は余市工場を見学して
余市駅前の寿司屋で地物の魚介類に舌鼓を打ち、
翌日からは「やまざき」や「proof」をはじめとして
ススキノのバーを巡るそうである。羨ましい限りだ。
片野さんの横ではもう一人のバーテンダーが
私達の会話に注意深く耳を傾け時折うなずく姿がある。
小澤洋司バーテンダー。山本さんの義理の兄弟でもある
横浜ご出身の小澤さんはホテルバーや銀座一丁目の名店
「スタア・バー」などでご経験を積み重ねた後、
地元横浜に戻り、ここカサブランカに勤務することに。
大変朗らかで気さくな小澤さんは銀座にいた頃の
苦労話や思わず笑ってしまうような話、銀座の
バーの情報を実に気さくに話してくれる方であり
片野さん、小澤さん共に大変熱心に私などの話を
聞いてくれるのが何とも飲み手を嬉しくさせてくれる。
Ｂａｒという場所は「お酒」と共に「人」を求めに
行く所であることをまた実感した夜であった。
「Ｔｈｅ Ｂａｒ ＣＡＳＡＢＬＡＮＣＡ」
神奈川県横浜市中区相生町５－７９
第８スガビルＢ１Ｆ
０４５－６８１－５７２３
最寄り駅
関内駅、地下鉄馬車道駅からそれぞれ徒歩７分程度
お店一口メモ・・・
バー初心者から通い慣れた上級者まで
幅広い客層にキチンと丁寧に対応してくれる
落ち着いた雰囲気のオーセンティックバーです。
チャージ６００円、カクテル８００円～、ウイスキー類も
７００円～と大変リーズナブルな価格は横浜だからこそ。
フレッシュフルーツの旨味を最大限引き出しながら
味わい深くしかもバランス良いカクテルは
カクテルは飲み始めたばかりという方でも
十分にその美味しさを楽しめる一杯だと思います。
