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№88     

三笠會舘本店 「BAR 5517」


 

「番地」

 

東京都中央区銀座5-5-17。

 

この住所は一体何処なのかと言うと

 

大正14年創業の老舗レストランビル

 

「三笠會舘本店」の住所を指し示している。

 

フレンチやイタリアン、中華から和食まで

 

世界各国の多種多様なジャンルの店舗を

 

銀座を中心に幅広く展開してきたことで有名だ。

 

このビル地下にはこの番地が店名に使われている

 

静かで落ち着いた雰囲気を備える本格バーが

 

あることを知る銀座のバーファンも多い。

 

三笠會舘本店「BAR 5517」。

 

地下へ続く階段を静かに下りながら

 

今日の一杯目は何にしようかと考えつつ

 

バードアを開けると白バーコートが佳く似合う

 

老バーテンダーがようこそと迎えてくれる。

 

チーフバーテンダー稲田 春夫氏。

 

北海道美唄ご出身の道産子である稲田さんは

 

今年2005年で御年77歳を迎え、

 

銀座や浅草をはじめとするバーテンダー経験は

 

50年を越す大ベテランのバーテンダーだ。

 

 


「祖父」

 

稲田さんと同じカウンター内には私と同世代、

 

いやもっと若いかもしれないバーテンダーの皆さんが

 

日々バーテンダー技術向上に切磋琢磨しており

 

時折稲田さんから技術指導を受けていたりする。

 

白髪に知的な銀縁眼鏡の稲田さんは一見すると

 

頑固で恐そうなイメージを持つ方も多いと思うが

 

普段は寡黙なのだが実は大変気さくな方であり

 

私のような30歳そこそこの若輩者にとっては

 

人生の先生であり私の祖父のような存在である。

 

もう二十年近くも前に他界した私の祖父は

 

北海道のとある炭坑で炭坑夫として働いていたのだが

 

実は稲田さんもバーテンダーになる前は

 

地元北海道の炭坑で働いていたご経験があり

 

キリッと冷えたサイドカーを飲みながら

 

稲田さんが炭坑夫だった頃の苦労話を聞くと

 

今思えば祖父もきっと苦労していたんだろうなと

 

少し感傷的な気持ちにもなってしまったりするのは

 

その優しい眼差しが亡き祖父に似ているからかも。

 

そんな稲田さんが作るカクテルはあくまで正統派。

 

「基本に忠実なことが最良のサービス」と言う。

 

「バーで静かに語らいながら一日の疲れを忘れる。

 

若い人達にはそんな大人の遊び方を学んで欲しいね。」

 

とおっしゃる稲田さんのその言葉の一端には

 

酒文化、そしてバー文化への想いが伝わってくる。

 

今日のシメに稲田さんオリジナルのカクテルを一杯。

 

この店の名を冠した「5517」をオーダーし、

 

私の酒場の「おじいちゃん」のお店を後にしようかな。

 

 


三笠會舘本店 「BAR 5517」

 

東京都中央区銀座5-5-17

 

三笠會舘本店 B1F

 

03-3289-5676

 

http://www.mikasakaikan.co.jp/e_5517.html

 

最寄り駅

 

地下鉄銀座駅より徒歩3分

 

お店一口メモ・・・

 

バーテンダー界でも重鎮中の重鎮である

 

稲田さんは「カクテル名人」の名を持つ

 

バーテンダーですのでまずはカクテルを

 

オーダーしてみてはどうでしょうか。

 

文中にも登場したカクテル「5517」は

 

ドライジンに「ミドリ」リキュールと

 

フレッシュライム、ホワイトミントを加え

 

シェークしたお店でも人気ナンバー1の

 

大変飲みやすい仕上がりになっています。

 

女性にもオススメのカクテルですよ。