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№85     

「Verve bar Koishikawa 無縫庵」


 

「酒庵」

 

地下鉄丸の内線池袋方面に乗車し

 

終点池袋駅の2つ前「茗荷谷」で下車する。

 

現在この茗荷谷という地名は既に無く

 

地下鉄駅名としてのみ残っているのだが

 

その名の通り江戸時代にはミョウガ畑が

 

このあたり一帯に広がっていたそうである。

 

改札のすぐ前にある春日通りを渡ると

 

今度は「小石川」という地名になる。

 

300年の歴史を持つ日本最古の植物園

 

「小石川植物園」や桜並木で有名な「播磨坂」など

 

ぶらっと散歩するにはとてもイイ街である。

 

そんな小石川に静かに灯りをともすお店あり。

 

蔦が絡まりいかにも隠れ家といった入り口には

 

大きく「無縫庵」という文字が浮かび上がり

 

創作和食か何かのお店だろうかと思ってしまうが

 

扉を静かに開けるとそこには本格バーが広がる。

 

照明が落とされた薄暗い店内はいくつもの

 

キャンドルによってやわらかく照らされている。

 

モルトからリキュール類まで酒瓶達がひしめく

 

バックバー横のアンティーク物の壁掛けランプも

 

古き良き時代の面影を今に伝えるアイテム。

 

木質などこか懐かしさを感じる店内には

 

サッチモの活き活きとした味ある低声が

 

BOSE製スピーカーから流れており

 

この深みのある音圧はもちろんアナログ盤だ。

 

「Verve bar Koishikawa 無縫庵」。 

 

 


「家族」

 

思わず「姉御!」と慕いたくなってしまう

 

凛としたチーフバーテンダー伊沢あき代女史。

 

お客様との距離をきちんと使い分ける伊沢さんは

 

こちらが話したいときには実にざっくばらんに

 

古くからの友人かのように話しかけてくれるが

 

スピーカーに耳を傾けたいなと思ったときなどは

 

それを瞬時に察知し邪魔することはしない。

 

橡の木を使った10㎝厚の一枚岩カウンターは

 

オーナーでもある伊沢さんのお母様のこだわり。

 

「本当は靴を脱いでもらいたいくらいなんですよ。」

 

と話す足掛けも大変高級な樹木を使用している。

 

これを含めアンティークキャビネットの設置など

 

内装に関してはご家族皆さんで手作りによって

 

仕上げたときいた時は流石に驚いてしまった。

 

何せ伊沢さんは4人姉妹と女手ばかりなのだ。

 

ちなみに伊沢さんの妹さんもカウンターに立ち

 

お姉さんと同様にお客様を笑顔でもてなす。

 

このあたりでも有名な美人姉妹のいるお店

 

であることを是非とも付け加えたい。

 

ラフロイグ、アードベックと飲み進め

 

角ハイボールを飲んだあと仕上げに

 

シャルトリューズのグリーンで口を締める。

 

どのオーダー時もそうなのであるが

 

液体が注がれるグラスがアンティーク物も含め

 

どれも大変素晴らしくこれまたセンスが光る。

 

店名の「Verve」はジャズ好きなら誰もが知る

 

世界最大のジャズ・レーベルであり

 

エヴァンス、エラ、ピーターソン、ガレスピーなど

 

蒼々たるジャズ・ジャイアンツが作品を残している。

 

ジャズの話で盛り上がりながら

 

少し鼻歌交じりでつぎに回すアナログ盤を

 

嬉しそうに選び出す伊沢さんの姿に

 

思わずこちらまで嬉しくなってしまう。

  

 


「Verve bar Koishikawa 無縫庵」

 

東京都文京区小石川5-6-20

 

03-3943-2454

 

最寄り駅

 

東京メトロ丸の内線茗荷谷駅より徒歩3分

 

お店一口メモ・・・

 

場所柄もあり常連さんや地元の方が

 

やはりお客様の中心となっておりますが

 

初めての方も温かく迎えてくれる

 

アットホームで素敵なお店です。

 

女性スタッフのみのお店であり

 

日替わりのパスタなどはかなり本格的。

 

女性ならではの気遣いも随所に見られます。

 

伊沢さんとのお喋りを楽しみに

 

やってくる女性お一人のお客様や

 

ジャズを愉しみながら食事を取る

 

カップルの姿なども見受けられます。

 

アンティーク家具なども一見の価値有り。