Compass

№84     

「パイプのけむり 武井」


 

「酒縁」

 

北関東のカクテル街、栃木県宇都宮へ。

 

今宵は大変恩義在る先輩と久々に

 

止まり木の向こうでお酒を呑みながら

 

日頃の疲れを癒しくつろぐのを楽しみに

 

出張ということでやって来たのである。

 

私は北海道札幌、先輩は九州福岡の出身。

 

そんな日本の両端を故郷に持つ二人が

 

何かの縁か、いや「酒好き」の縁だろうな、

 

以前その先輩が東京に勤務していた頃は

 

銀座や新宿、池袋などへ呑みに行っては

 

「いつかススキノで一緒に呑みたいですね。」

 

「中州にもイイ店あるから九州にも来い。」

 

などと互いの田舎の盛り場話などしたものだ。

 

そんな先輩が宇都宮へ赴任したため

 

呑む機会もめっきり少なくなったのだが

 

私の出張で久々に一杯やることになり

 

栃木県庁近くの老舗居酒屋で腹を満たし

 

「じゃあ次はバーで一杯やりましょうか。」

 

ということで一軒のお店へ向かう。

 

1996年開店の実力店「パイプのけむり 武井」。

 

バードアを開けると真っ直ぐに伸びた

 

暖かみのある一枚板のカウンターが輝いている。

 

何故かその中央には某英会話スクールの

 

キャラクターであるピンクのウサギがおり

 

不思議に思いながらもその前へつい二人で座る。 

 

 


「腰重」

 

白いバーコートに黒の蝶ネクタイが似合う

 

オーナー・バーテンダーの武井 常夫氏は

 

1988年に日本バーテンダー協会の

 

ベストバーテンダーに選出された方であり

 

そのサービスと技術はもちろん一級だ。

 

同協会の栃木支部長なども務める

 

業界の重鎮としてご活躍なさっている。

 

そして何より武井さんの素敵なところ、

 

それは「気さくさ」と「お茶目さ」である。

 

サイドカーを飲みながら武井さんに

 

「銀座をはじめ都内のあちこちのバーで

 

『本当に武井さんはいつまでもお元気ですよ』

 

という話をお店の方からよく聞きますよ。」

 

と言うと武井さんはニッコリしながら

 

「そりゃ私は若いんだから当然だよ、

 

銀座にいるじいさん達とは違うんだから。

 

田舎にいるとぜんぜん歳取らないからね。」

 

と嫌み無く目を輝かせながらそう話す。

 

武井さんと一緒に立つ20代の女性バーテンダー

 

田代晴美女史はバーテンダースクール卒業後

 

武井さんの元でその調酒技術を学び

 

ジュニアのカクテル・コンペティションなどでも

 

活躍する笑顔が優しい注目のバーテンダー。

 

黒のバーコートを着こなし背筋をぴんと伸ばして

 

シェーカーを振る姿は実に頼もしい。

 

私の隣でマティーニをさっと飲む先輩が

 

「てっきりお二人は親子かと思っていましたよ。」

 

と言うと武井さんはとても嬉しそうに

 

「あら、そうかい?」と水割りを飲んでいる。

 

ホームバーのようなリラックス出来る雰囲気に

 

私も先輩もついつい腰が重くなっていまう。

 

 

 


「パイプのけむり 武井」

 

栃木県宇都宮市本町4-1

 

マホロバビル1F

 

028-627-6891

 

最寄り駅

 

JR宇都宮駅より徒歩20分

 

東武宇都宮駅より徒歩10分

 

お店一口メモ・・・

 

サイドカーをはじめカクテルは800円~。

 

武井さんの軽快なトークとともに

 

ラムとカンパリを使った武井さんのオリジナル

 

「ビバ・アメリカン」や大変フルーティーな

 

田代さんのオリジナル「ピュアハーモニー」など

 

目と舌で愉しめるカクテルをどうぞご賞味下さい。