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№80     

「居酒屋あるぷ」


 

「高峰」

 

今宵は銀座の「山小屋」へ一杯ヤリに行く。

 

目指すはバー街のチョモランマ、銀座八丁目。

 

注意しないと通り過ぎてしまいそうな路地奥に

 

大きな「あ」「る」「ぷ」の看板文字が光っている。

 

銀座の老舗バーの一つ「居酒屋あるぷ」。

 

「居酒屋」の文字を冠しているが

 

もちろん歴とした西洋式酒場である。

 

店の年輪を深く刻むバードアを開けると

 

8席ほどあるカウンター席は

 

このお店をこよなく愛する皆さんで満席。

 

中には立ち飲みする常連さんもいらっしゃる。

 

「立ち飲みだけどここ入りなさい、ここ。」と

 

飲み手諸先輩の皆さんがわざわざ私のために

 

貴重なスペースを空けて下さる。感謝。

 

実は皆さん「山」が大好きな方々である。

 

早速、現オーナーの喜和子ママに

 

ハイボールを少し薄めにお願いする。

 

あるぷのハイボールベースは「スーパーニッカ」。

 

北海道生まれの私には馴染み深い銘柄だ。

 

「これも美味しいから食べてね」とママが

 

キャビアをのせたクラッカーを出してくれる。

 

キャビア粒の光沢がなんとも食欲をそそる。

 

BGMにはアントニオ・カルロス・ジョビンの

 

「イパネマの娘」が今ではあまり見なくなった

 

ダブルカセット付きCDデッキから流れている。

 

入り口にある黒電話もとても懐かしい。 

 

 


「保存」

 

店内の壁には美しい雪山の写真が

 

あちらこちらに数多く飾られており

 

店奥には「OGASAKA SKI」の文字も。

 

店名からもお分かりになるように

 

ママのご主人であった前オーナーが

 

大の山好き、スキー好きだったからである。

 

「あるぷ保存委員会発足してくれなきゃね。」

 

とママが言うとお客さん達は口々に

 

「それなら毎日会費支払いに来なきゃなぁ。」

 

「俺は今月出席率ほぼパーフェクトだぞ。」と

 

すぐさま会話と笑い声が店内いっぱいに広がる。

 

先ほど「保存」という言葉が出たが

 

このお店にはいつまでも保存したい

 

素晴らしい空間が実はお店の2階に在る。

 

階段を上るとまるでそこは明治、大正の

 

薫りがタップリと感じられる洋館の一室。

 

味わい深い色合いを持つソファーや家具、

 

豪華なシャンデリアや調度品の数々。

 

これぞ「絵になる」のひとことであり

 

銀座だからこそ見ることが出来る、

 

しかし今ではまず見ることが出来ない

 

「銀座文化」を知る空間である。

 

もちろん今でも現役で使用されており

 

時が止まっているかのようなこの別空間で

 

古き佳き銀座のバーを偲びながら

 

お酒をゆっくりと愉しむことが出来る。

 

いつまでも大切にしたいバーである。

 

 

 


「居酒屋あるぷ」

 

東京都中央区銀座8-7-5

 

03-3571-6464

 

最寄り駅

 

地下鉄銀座駅から徒歩6分

 

お店一口メモ・・・

 

とてもアットホームなお店。

 

やはり場所柄常連さんが多いですが

 

一見さんも快く迎えてくれるお店です。

 

常連の皆さんは大変気さくな方ばかりで

 

気を張ることなくお酒と楽しい会話を

 

笑顔とともに愉しめること間違いなし。

 

ついつい長居してしまいます。

 

そしてもちろん2Fは必見です。

 

「特別な空間」に驚かれることでしょう。

 

銀座バーファンには是非一度

 

足を運んで頂きたいバーです。