Compass

№60     

「holly Bar」


 

「船室」

 

今宵は銀座八丁目の「船室」でモルトを一杯。

 

もちろん銀座に港などは無い。

 

ここはとあるビル地下に静かに灯をともす

 

船室を模した座席数9席の本格バー。

 

楕円線を描きながら整然と並ぶ天井板達や

 

店奥壁に取付けられた円型木枠のパブミラー

 

そして壁に貼りつけられた旧世界地図が

 

どこかの映画のワンシーンにでも

 

登場しそうな一客船室を彷彿とさせる。

 

カウンター上天井からはランプが吊され

 

佳く磨き込まれた木製のカウンターをはじめ

 

店内全体が暖色系に照らされている。

 

この止まり木を取り仕切るのは

 

バーテンダー経験を10年以上持ち

 

CX(フジテレビ)大坪千夏アナウンサーを

 

どことなく彷彿とさせる女性

 

小島千明オーナーバーテンダー。

 

最近ではすっかりアイラモルト派だが

 

和洋中ジャンルにこだわることなく

 

お酒がとにかく大好きだという小島さんは

 

自衛隊員のご経験も持つ女性でもある。

 

そして単車乗りでもある彼女が

 

九州をツーリングした際にお会いした

 

先輩に当たる女性バーテンダーの

 

仕事に憧れの念を抱いたことが

 

このバーテンダー業界に入る

 

きっかけとなったそうだ。

 

この経歴を見ると一見男勝りの女性なのかなと

 

思われる方もいらっしゃるかもしれないが

 

まったくそのようなことは無い。

 

非常に繊細な心遣いをお持ちでいらっしゃる

 

女性らしい華のあるバーテンダーであり

 

彼女が作るカクテルや手料理からは

 

「優しさ」という味が溢れ出てくる。

 

 


「格好」

 

店名「holly Bar」は小島さんがお気に入りな

 

カナダ出身の女性歌手「Holly Cole」の名前を引用。

 

ホリーは端正な顔立ちとスレンダーな容姿ながら

 

どこか陽気で、どこか天の邪鬼なお姉さん的性格を持ち

 

実力派たるハスキーな歌声は決して歌唱力一辺倒で

 

グイグイとリスナーを押してくるのではなく

 

その歌詞の情感を最大限引き出すために

 

歌の詠み人へとシンクロナイズし

 

聴き手をその歌物語の中に引きずり込んでくれる

 

ジャズ歌手という枠にとらわれない歌い手であり

 

彼女がムーディーに歌い上げる曲達は

 

夜の酒場にとかくピッタリと来る。

 

小島さんがHolly Coleを好く理由(わけ)は

 

彼女と小島さんは心のスタイルという点で

 

どこか共通ポイントを持っているからではと

 

私は勝手な思い込みをしているところだ。

 

お二人ともどこか男には真似できない「格好良さ」がある。

 

そして小島さんが好きなアーティストに

 

もう一人、Tom Waitsがいる。

 

彼の独特なしゃがれ声と繊細なピアノからは

 

酒の匂いがプンプンと漂っており

 

聴き手が思わず酒を煽らずにはいられなくなる曲を

 

作り歌い続けた私も大好きな酒場の大変似合う男だ。

 

アイラのちょいと癖のある奴をガツンと呑みながら

 

佳い酒と、そして佳い音楽に今日も酔い

 

至福の時間はあっという間に経過し

 

銀座の夜は更けていくのである。

 

小島さんも仕事後に片付けしながら一杯なんてときは

 

ホリーやトムを聴きながらなんだろうな、きっと。

 

 


「holly Bar」

 

東京都中央区銀座8-7-21

 

銀裕ビルB1F

 

03-5537-6168

 

http://homepage3.nifty.com/hollybar/

 

最寄り駅

 

JR・地下鉄新橋駅より徒歩5分

 

お店一口メモ・・・

 

バーテンダー歴も早10年を超した

 

ヴェテランバーテンダー小島さんの作るカクテルは

 

本をしっかりと押さえた美味しいカクテルです。

 

お客様は常連の男性の方が多いと聞きますが

 

お酒好きな女性のお客様にも是非オススメしたい

 

銀座のバー激戦区中の隠れ家的な一軒です。

 

大変人柄も良く安心して時(とき)を過ごすことが

 

出来る貴重なお店の一つだと思います。