Compass

№60     

「BAR 神山」


 

「部屋」

 

男は「隠れ家」という言葉になぜか弱い。

 

私のようにBarが好きな男性などは

 

この言葉にめっぽう弱いことだろう。

 

誰も知らない場所さえ分かりにくい所に

 

静かに存在するバーのドアを開け

 

お客は自分だけのバーカウンターで

 

マスターと一対一でゆっくりと

 

世界中のお酒や旅行の話などを

 

美味いお酒とともにするなんてのは

 

真に贅沢な時間の使い方であろう。

 

そんなバーを追い求めて辿り着いたのは

 

池袋から東武東上線急行で30分弱

 

埼玉の「小江戸」と呼ばれる旧城下町

 

蔵造りの家並み未だ残る「川越」である。

 

駅を降り向かったのは一軒のマンション。

 

何気なくエレベーターに乗り3Fへ。

 

「306号室」を探しに奥へと進むと

 

赤文字で「Bar Six Senses」と

 

書かれた扉をやっと見つける。

 

幾分緊張しながらドア左のインターホンを

 

ポンと押すと濃緑色のドアが静かに開き

 

それほど背は高くなく理知的な眼鏡が

 

大変佳く似合う若き一人のバーテンダーに

 

洞窟をイメージして自作で内装したという

 

黒色で統一された室内へ迎え入れられる。

 

やや小さめのシャンデリアに照らされた

 

室内にはわずか数脚のストゥールと

 

ソファーが一つだけの小さな空間であり

 

トールタイプスピーカーから流れる

 

BGMにはオーナーの趣味と思われる

 

クラシックピアノの調べが美しく流れる。

 

バックバーをチラリと眺めると垂涎の

 

レアボトル達が美しくキラキラと輝く。

 

ふと室内の空気が澄んでいることに気が付くと

 

「清浄器を使用し徹底して澱みを取り除いてます。」

 

と話すのはオーナーバーテンダー神山 学氏。

 

 


「宝庫」

 

早速御影石のカウンターに肘をつきながら

 

大好きなモルトであるダグラスレインの

 

アードベグ1992の10年物を頂く。

 

力強いピート香の「潮臭さ」が子どもの頃に遊んだ

 

北海道釧路の漁港の香りを思い出させ懐かしくなる。

 

神山さんは元々某自動車会社にお勤めだったが

 

お酒の世界にのめり込みこの道を選んだ。

 

「マンションバーには最初からこだわってました。」

 

と話す神山さんは会社退職後にホテルバーなどで

 

修行しあっという間にこのお店を開店した。

 

修業先の信頼する先輩に言われた言葉、

 

「最初はとにかく商売は小さくはじめた方が良い。」

 

という言葉に地元狭山の隣町であるここ川越で

 

マンションの一室をお店にすることを決めた。

 

「仕事に生かそうと料理も習っているんですよ。」

 

という神山さんが出してくれた一皿は

 

柚子胡椒と岩イワのりを使い日本酒で味付け、

 

ゴボウが佳いアクセントとなったあっさりうどん。

 

思わず日本酒が呑みたくなった私は

 

天吹・雄町の純米吟醸を一杯所望する。

 

「実に旨い組み合わせですね。」とお互い笑顔。

 

日本酒の他にも「龍(ロン)」や「極上大石」、

 

「青酎」や「山翡翠」など各種焼酎も揃う。

 

注目すべきは洋酒の取り揃え。

 

佳酒ポールジローの1968年など

 

メニューにものせている物もさることながら、

 

洋酒辞典などにも載っていない例えば

 

ポーランド産の謎のウオツカや

 

メキシコの某テキーラなど

 

「隠れ物」を多数所有し提供して下さる。

 

これも神山さんのお人柄とも言えるもので

 

海外に勤務する会社員時代の上司や

 

先輩の皆さんが入手してくれたそうである。

 

お客さんは地元の女性なども多く

 

神山さんも現在オリジナルカクテルの

 

創作に大変注力なさっており

 

グリーンティーリキュールsasaと

 

抹茶を茶器にて佳く泡立て作り上げる

 

和テイストがたっぷりの

 

抹茶アイスカクテルなどは

 

女性にもオススメの一品だろう。

 

「蔵の街」の秘酒宝物庫として

 

今後がますます楽しみなバーである。

 

※店名が「BAR 神山」へと変わりました。

 


「BAR 神山」

 

埼玉県川越市菅原町19-1

 

伊勢原六番館306号室

 

050-3414-1623

 

最寄り駅

 

JR川越駅東口より徒歩1分

 

西武新宿線本川越駅より徒歩10分

 

お店一口メモ・・・

 

お酒と真剣に向き合いながら

 

確かな味覚を持つ神山さんの

 

オススメするお酒はどれも一飲の価値あり。

 

土地柄もあり都心ならば数千円する

 

レア物も大変リーズナブルです。

 

こういうお店は出来れば静かに

 

一人でじっくりと愉しみたいです。

 

建物は少し見つけにくい所ですので

 

その際には電話にて神山さんに

 

ご確認なさったほうが賢明かと存じます。