Compass№6      

「北新地サンボア」


 

「無氷」

 

 午後三時。まだ陽も高い新地の路地に

 

早くも一軒バーの灯りがともる。

 

「北新地サンボア」オーナー、新谷尚人氏。

 

「サンボア」を語らせて氏ほど熱く語る

 

バーテンダーは恐らくいないであろう。

 

スタンドバー形式の「サンボア・バー」は

 

関東ではなかなか馴染みが薄いが

 

関西では80年以上の歴史を持ち、

 

大阪・京都をあわせて約10軒を数える

 

関西の代表的なのバースタイルである。

 

今日もお店が開店すると同時に

 

静かにバードアを開けて店内に入り

 

木目床をゆっくりと進んで

 

左手にある磨き上げられた光沢溢れる

 

バーカウンターの中央に立つ。

 

その頭上には緑色が何とも美しい

 

落ち着きある傘ライトが2段式の

 

バックバーを美しく照らす。

 

BGMは大変抑えめに流れており

 

静かでゆったりとした空気が店内に充満する。

 

早速片足を足元の真鍮製のバーにかけて

 

角サンのハイボールをお願いする。

 

(角サン・・・サントリーウィスキー角瓶)

 

新聞を読みながらドリンクが仕上がるのを待つ。

 

このお店のレシピは氷は一つも入れない。

 

たっぷりな量を飲む私にとってこれは有り難く

 

私と同じく開店とともにいらっしゃった常連さんと

 

出来上がったお酒を世間話などしながら

 

ゆっくりゆっくりと愉しむ。

 

この液体がのどを通る瞬間の爽快感は

 

一日の疲れを一瞬にして解放してくれると同時に

 

明日への活力を与えてくれることであろう。

 

 


「暑飲」

 

大阪の夏は暑い。

 

天気予報上では東京とそれほど

 

気温は変わらないはずなのだが

 

私はなぜか昔から大阪は暑い暑いと

 

思い込んでいる人間である。

 

人々の熱気か、商売の熱気か、

 

それとも勝手な思いこみか。

 

とにかくそんな暑い1日を終え

 

1杯目に角、2杯目にホワイト

 

3杯目にオールド、4杯目に

 

ついにフェイマス・グラウスと

 

各種ハイボールをピーナツをアテに

 

ついついスイスイと飲んでしまう。

 

「それにしてもお強いですねえ。」

 

「なかなか大阪来る機会も減りましたから

 

今日は思いっきり飲み溜めしていきますよ。」

 

「いやいや、銀座店の方もありますから。」

 

お互いに笑いながらそんな会話がまたいい。

 

カウンターに肘をつきながら

 

グラス片手にバックバーをぼんやりと眺め

 

次はどうしようかなと思案する。

 

すでにBarファンにはお馴染みであるが

 

このお店のカウンターは今は無き名店

 

「神戸ハイボール」から譲り受けたもの。

 

私などが及ぶところではない大先輩の

 

飲み手の方々がかつてこのカウンターで

 

どんな方々とどんな話をしながら

 

お酒を愉しんでいたのだろうと

 

思わず感慨にふけってしまうのは

 

根っからの酒好き、いやBar好きの性、

 

ということにとりあえずしておこう。

 

 

 

  


「北新地サンボア」

 

大阪市北区曽根崎新地1-9-25

 

06-6344-5945

 

http://www.samboa.co.jp/

 

最寄り駅

 

JR東西線北新地駅より徒歩2分

 

地下鉄四ツ橋線梅田駅より徒歩7分

 

お店一口メモ・・・

 

営業時間は15:00~ということで、

 

ゆったりと時間(とき)を味わいたい方は

 

是非早い時間がおすすめです。

 

オススメのハイボールは 1,000円。

 

大正モダーンの雰囲気を

 

存分にあじわってください。

 

※新谷さんは現在「銀座サンボア」にいらっしゃいます。