Compass
№54
「 茶碗 」
「酒食」
私は「レストランバー」と呼ばれる類のお店へ
入ることは滅多に無い。
その手のお店のバックバーには
ウィスキーやブランデー、リキュール類などの
一定の洋酒は並べられてはいるものの、
何処にでもあるありきたりのラインナップで、
メニューを見せて頂いてもお店の個性を感じるお酒や
カクテルに出会ったことがまず無く、
そのカクテルに使用するジンをはじめとした
スピリッツ類もバックバーの酒棚に並べられている故
お店の照明に昼夜照らされ、
どう見ても品質管理にはほど遠い
お粗末なお店が多いという先入観を持ってしまっているからである。
大手酒造メーカー系のレストランバーの
イメージが先行してしまっているからであろう。
決してそのような店ばかりでは無いことは
頭では分かっているのだが、
今までどうも敬遠しがちであった。
そんな時、日本バーテンダー協会上野支部長の増田氏から
「赤坂にもう一軒お店を出す」とのご連絡を受け
プレオープンのご案内を頂戴したところ、
なんと「Bar&JapaneseRestaurant」と書かれているではないか。
嗚呼、この時がついに来たかという気持ちと、
信頼する増田氏の事だから
中途半端なお店をご開店なさるはずは絶対に無いとの気持ちが
微妙に入り混じりながらも、
レストランバーへの妙なトラウマを払拭したいという気持ちもあり
高校時代の友人F氏とともに赤坂へと向かった。
バードアを開けると、生まれたてのバーの清々しい匂いと、
ライトアップされた明るく気持ちの良い店内が
我々の嗅覚・視覚を楽しませてくれる。
真っ直ぐにバーカウンターへと足を進めると
カウンター背後はウィンドウ作りとなっており
そこから赤坂の街を眺めることが出来る
ある意味で高級ホテルの最上階ラウンジバーを連想させる。
「仄酒」
早速ストゥールに腰掛け、
某有名店で勤務なさっていたところを
増田氏に口説き落とされ?!マネージャーに抜擢された
及川淳一バーテンダーにお酒をオーダーする。
「和酒、洋酒、カクテルとジャンルにはこだわらず
料理一品一品それぞれに対してベストマッチするお酒を
一つ一つ提供していきたいと考えています。」との言葉に、
今回は及川さんにお任せする形でお酒を出して頂く。
素材の味を十分に引き出した焼き具合の江戸前の穴子焼きや、
出来立てのため口の中で甘くとろける手作り豆腐などと一緒に
美味いお酒が次々と手元に提供される。
日本酒も洋酒も好きな私としては
その中でも食中酒としては最高と思ったのが
広島の銘酒 「 竹鶴 」 である。
洋酒好きな方ならアッと思われた方もいらっしゃると思うが、
そう、ニッカウヰスキーの創業者で
「 日本のウイスキーの父 」 と呼ばれている
竹鶴政孝氏 の生家の酒蔵で造られた日本酒である。
近年流行の個性と香りを全面に出した日本酒達とは一線を画した
香りは押さえられてあるものの、
しっかりと酒米の味を愉しめる食中にはピッタリのお酒だ。
最近大注目の蔵:埼玉の「神亀」酒造でも
お仕事をなさっていたという
まだ30代後半にしてその職を任された石川達也杜氏の
「香りを抑え、お米の力が生きた、
食事にも合う、飲んでおいしい酒」という理想に達している
お酒といえるのではないか。
ちなみに洋酒も日本酒も「水」は大きな重要性を持っているが、
ニッカウヰスキーの「ヰ」の字は井戸を表し、
和酒・洋酒の共通点である水の大切さを感じさせる。
そんな話で盛り上がりながら
日本酒も良いが洋酒もということで
大好きなアイラモルトを岩牡蠣などとともに頂き、
仕上げはシャルトリューズで口を締め、
すっかりとトラウマのことすら忘れて
友人と気持ちよく酔いながら家路についた。
尚、増田氏がご自身で取り付けたスピーカーから流れる
BGMもナカナカのお店だが、
担当はディースにいらっしゃった
丸目香耶バーテンダーが担当しているところも要チェック。
ノリノリで踊りながらシェーカーを振る彼女の姿が
目に浮かぶ。。。
「 茶 碗 」
東京都港区赤坂3-10-1
第一対翠館ビル 6F
03-3583-5005
最寄り駅
地下鉄赤坂見附駅より徒歩3分
お店一口メモ・・・
赤坂駅すぐという立地もあり、
お酒・料理ともに若干高い設定となりますが
女性同士の会食や
ちょっとした記念日などに利用するには
最適なお店と言えるでしょう。
スタッフの皆さんもも温く、
尚かつキチンとした接客で
「安心」を提供してくれます。
オーナーである増田氏は普段地下にある
BAR DECEの方にいらっしゃいますが
お顔を出すこともあります。
※現在はBAR DECEへ吸収という形になりました。