Compass

№40     

Bar「 Abbey Road 」


 

「音酒」

 

二月の札幌。

 

全国的にも有名な「さっぽろ雪まつり」が行われるこの時期

 

夜ともなれば氷点下の空気が

 

黙っていても私の顔を強ばらせる。

 

北の不夜城・札幌ススキノにひさしぶりに降り立つと

 

ここススキノも雪まつり会場の一つとなっているせいか

 

美しくライトアップされた氷の彫刻像を楽しもうと

 

多くの観光客達で夜中まで賑わっている。

 

そんな二月の札幌らしい光景を横目に見ながら

 

足早に一軒のミュージック・バーへと足を進める。

 

Bar 「Abbey Road」。

 

店名をご覧になって熱狂的なファンならずとも

 

お気づきになった方も多いではないだろうか?

 

英国リバプールにある

 

「ビートルズ」縁(ゆかり)のスタジオ名であり

 

彼ら4人が揃って最後に作成した

 

名アルバム「Abbey Road」。

 

札幌から車で1時間ほどの栗山町ご出身で

 

札幌でのバーテンダーのご経験も長く

 

道産子らしい大変柔らかい物腰の

 

オーナーバーテンダー橋場 勝洋氏は

 

ギタリストとしてライブ等でPlayなさる一方

 

音楽関係者や地元の洋酒ファンをはじめ

 

今日も止まり木に集まる様々なお客様達を

 

素晴らしい音楽とお酒で手厚くもてなす。

 

 


「命水」

 

大好きな音楽そして大好きなアイラモルトウィスキーを

 

橋場さんにリクエストして至福の一時を過ごす。

 

バックバーに立ち並ぶお酒達と

 

暖かさを感じさせる木目が基調となったカウンターは

 

東京都心のカジュアルなバーをも彷彿とさせ

 

すっかりここが北国札幌であることを

 

忘れさせてしまう雰囲気であるのだが

 

ふとカウンターの背中にある窓から見える

 

ススキノの雪景色が目に入り

 

改めて私が北国にいることを実感させた。

 

その雪景色と目の前で傾けているグラスを見ながら

 

「北海道」と「スコッチ・ウィスキー」

 

そして「ビートルズ=英国」

 

という3つの単語が私の頭で響きあう。

 

「北海道」という地は

 

スコッチ・ウィスキーの本場英国スコットランドの

 

ハイランド地方と非常に気候・風土が似ており

 

かつてスコットランドのキャンベルタウンのとある蒸留所で

 

スコッチ作りを修得し蒸留学を修めた

 

「竹鶴政孝」という日本人が

 

日本のウィスキーの理想郷として

 

札幌からもそう遠くはない「余市」という街で

 

ウィスキー造りを始めた。

 

国産ウィスキーメーカーの雄

 

「ニッカウヰスキー」の誕生の瞬間である。

 

そのニッカウヰスキーの造るウィスキー

 

「シングルカスク余市10年」が

 

世界唯一のウイスキーの専門誌である

 

英国の「ウイスキーマガジン」主催:

 

東京、エディンバラ(英国)、ケンタッキー(米国)の

 

世界3ケ所で行われた

 

「2001 THE WORLD'S MOST DEFINITIVE WHISKY TASTING」

 

において世界の名だたるウィスキー達を押さえ

 

堂々の世界第一位のポイントをマークし

 

それまでほとんど無名だった

 

「ジャパニーズ・ウィスキー」という分野を

 

存分にアピールするとともに

 

世界の大多数のウィスキー・テイスターに

 

大きな衝撃を与えた。

 

その偉大なウィスキーを造り出す

 

北の大地「北海道」とそこに住む人々の

 

偉大さを噛み締めずにはいられない。

 

改めてその感動を思い起こさせてくれた

 

橋場さんと「Abbey Road」に乾杯したい。

 

 


Bar 「Abbey Road

 

札幌市中央区南4条西2丁目

 

南4西2ビル 4F

 

011-223-1222

 

http://www.barabbeyroad.com/

 

最寄り駅

 

札幌市営地下鉄南北線

 

すすきの駅より徒歩3分

 

お店一口メモ・・・

 

バーボン、スコッチ、ブランデーと

 

ウィスキー種類は大変豊富です。

 

お値段は1ショット約800円~1,500円。

 

もちろんビールやスピリッツ類も数種類あり。

 

また橋場さんの作るカクテルは

 

どれも基本に忠実な味わいで

 

女性にも大好評です。

 

スタンダードを中心に約60種類あり

 

お値段はいずれも1,000円前後です。

 

良いお酒と、良い音楽で今宵も。

 

※大変残念ながらご閉店なさいました。