Compass

№34    

「KAZZ」


 

「裏渋谷」

 

今日も渋谷へ。

 

若者を中心とした人の波・波・波。

 

都内随一のこの人混みの中を歩くだけで

 

自分の眉間にしわが寄るのが分かる。

 

渋谷、引いては東京という都市の持つエネルギーは

 

圧倒的であり、他の都市を遙かに凌駕する。

 

ご年輩の方々や、地方からいらっしゃった方は

 

口々に「心の安住の場も無い街」と形容する。

 

そんな渋谷はもちろんバーの

 

激戦区の一地区であり、

 

数多くのバーテンダーが日々努力精進し活況を呈しているが

 

そのバーテンダー達もやはり一人の人間。

 

米国では、自殺志願者の最後の話し相手は

 

家族や友人ではなく、バーテンダーを選ぶ者が

 

最も多いとさえ言われ、

 

つまりは本来は剛毅と繊細さを合わせ持った

 

大人の人間でなければ務まらないとされるバーテンダー達も

 

時には休息し、安らぎを求める時もある。

 

渋谷:南口。

 

改札を出て5分も歩くと「ここが渋谷なのか?」

 

というほど落ち着いた街の顔を覗かせ、

 

その繁華街の一角に、彼らのための

 

止まり木が存在する。

 

「KAZZ」。 

 

 


「星空」

 

とあるビルの急な狭い階段を上がると

 

左手に小さな小窓の付いたお店のドアが待ち受ける。

 

そのドア徐ろに開けると、

 

マスターのKAZZこと小林和仁さんが

 

二坪しかないお店のカウンターの中から

 

「いらっしゃいませ」の声。

 

止まり木前に席は僅かに六つ。

 

アットホームなこのバーの日曜日。

 

カウンターはTシャツにGパンといった

 

渋谷らしいラフな格好のお客さんが

 

今日はkazzさんの大好きな

 

仮面ライダーやゴジラ、

 

大魔神の話などを熱く語らっている。

 

一体このお客達は何者なのか?と

 

ちょっと横から覗いてみると、

 

なんと渋谷のバーテンダー陣ではないか。

 

お店には某有名特撮映画監督などもよく訪れるという。

 

ふとお店の中央を見上げると

 

ロッジ(山小屋)の天窓を思わせる木窓があり、

 

バックライト製の星達が輝く。

 

お店を立ち上げる際に設計デザイナーが、

 

「例えば茶室のような狭い室内空間の中に、

 

窓がありそこから外の空間を感じさせるようなお店」

 

というコンセプトに基づき仕上げたとのことである。

 

バックバーを眺めると、シングルモルトの

 

100年ものや、終売もののウィスキーも

 

惜しげもなく並べられ、

 

ウィスキーファンであれば背筋が思わずゾクゾク

 

することは必死であるが、

 

KAZZさんの人柄とお店の極端な狭さが、

 

近所の居酒屋のような

 

親しみやすさを感じるバーを作り出している。

 

思わず故郷のスナックあたりを

 

思い出してしまう温いお店だ。

 

 


「KAZZ」

 

東京都渋谷区桜丘2-8

 

03-3461-2286

 

最寄り駅

 

JR渋谷駅南口より徒歩3分

 

お店一口メモ・・・

 

NBA(日本バーテンダー協会)

 

渋谷支部のバーテンダーの皆さんも

 

バーテンダーの衣を

 

完全に脱ぎ捨ててしまう

 

心地の良いお店。

 

最初はあまりの狭さに

 

戸惑うかもしれないが、

 

気取る必要は全くなく、

 

リラックス出来ること間違いなしです。

 

KAZZさんはNBA渋谷支部の重鎮です。