Compass№167

「BAR BREEZE」


  

「微風」

 

湘南・茅ヶ崎と言えば、私の大好きな作家である

 

開高 健氏が後半生の16年間を過ごした場所だ。

 

氏の旧私邸である「開高健記念館」には書斎や

 

氏のワインセラー、釣り師としても有名であった

 

フライフィッシングの道具などが展示してあり、

 

お酒と釣りをこよなく愛した氏の軌跡を辿りに

 

今でも時々足を運ぶ私のパワースポットである。

 

建物入り口の石碑には、氏の直筆で彫られた隻句

 

「悠々として急げ」の文字が。ローマ皇帝の警句

 

「Festina Lente」を氏が解釈した文句であるが、

 

「物事をなすに当たっては慎重であれ」、つまり

 

故事成語「急がば回れ」と同義と言えるだろう。

 

しかし、世界中を巡った氏ならではの言い回しは

 

人間のスケールの大きさを感じずにはいられず、

 

私の人生訓としていつも心の中に刻み込んである。

 

湘南の海も近い記念館は実にイイ風が吹き込む。

 

潮の香りがほんのり漂う微風を感じるとついつい

 

モルトウイスキーが呑みたくなってしまったので

 

心地よい風に吹かれつつ、茅ヶ崎駅からほど近い

 

一軒の小さなバーの扉を開く。「BAR BREEZE」。

 

「そよ風」の名を持つこのお店のバーテンダーは

 

これまた「風」に関わり深い名の松風奈実女史。

 

横浜のUSS シーメンスクラブ、Bar HALEKULANI

 

など有名バーで修行を積んだ彼女はとても明朗で

 

落ち着きの中にどこか茶目っ気を隠し持っている

 

女性バーテンダーであり、そして子育てママの

 

二足のわらじを履く頑張りやさんな強き女性だ。

 

キャンドル達のやわらかな灯りに照らされた

 

カウンター8席のお店はまるでホームバーの様な

 

温かみ溢れる空間であり、地元 茅ヶ崎の飲み手が

 

気軽に訪れ、グラスを傾けながら会話を楽しむ

 

堅苦しくない空気感は真に「そよ風」なのである。

 


「茅産」

 

BAR BREEZEのチャームは奈実さん手作りだ。

 

新タマネギのオーブン焼きやコンソメのジュレ、

 

エビと野菜のマリネといったメニューに加えて

 

茅ヶ崎産小松菜の濃厚スープ、茅ヶ崎産のしらすと

 

キュウリの和えものなど、地産地消を目的とした

 

美味しい料理達を提供するお店は、平成24年9月に

 

開催した「ぐる呑み茅ヶ崎北口編」で、茅産茅消の

 

推進に貢献し、まちの活性化に寄与した店舗として

 

第一回「ぐる呑み市長賞」を受賞。地元茅ヶ崎を

 

愛し、愛されるお店として今後も茅ヶ崎を代表する

 

バーの一店となっていくであろうグッド・バーだ。

 

かつては保養地、別荘地であった茅ヶ崎も近年は

 

しっかりと東京・横浜のベッドタウン化が進み、

 

新たな茅ヶ崎市民の皆さんもちょっと家に帰る前に

 

一杯やりたいなっていう時に、スッと立ち寄ると

 

昔ながらの茅ヶ崎の地元ドリンカーのみなさんが

 

一見や常連の差も無く、温かく迎え入れてくれる

 

心地良い雰囲気があり、つい私も長居してしまう。

 

でも面白いのは、奈美さんは決してニコニコとして

 

カウンターに立っている訳ではない。実に凛とした

 

スタンスでお客さんと適度な距離感を常に測りつつ

 

相手の話を上手に受け止めながらも自分の意見を

 

しっかりと会話に織り込んでいく会話術を見て、

 

なかなかやるなあ、近頃の若手女性バーテンダーに

 

無いものを持ってるなあなんてブツブツ言いながら

 

ニヤケちゃってるのは、単なる酔っ払いのオヤジ

 

そのものだったりする。本当に情けないぞ、俺。

 

きっと天国の開高さんも閉口してるに違いない。

 

少し、茅ヶ崎海岸の松風に当って反省しようかな。

 

 


「BAR BREEZE」

 

神奈川県茅ヶ崎市元町4-10

 

五島ビルⅡ 201 

 

0467-85-3279

 

最寄り駅

 

JR茅ヶ崎駅より徒歩4分

 

お店一口メモ・・・

 

茅ヶ崎 の優しい潮風を感じられるコンパクトなバーです。

 

地元茅ヶ崎のお客様がまったりとお酒と楽しい会話を

 

楽しむ中にちょっと勇気を出して入ってみると、皆さんの

 

優しさに触れることが出来ますよ。もちろん松風さんが

 

そのコンシェルジュとして皆さんを優しく案内してくれます。

 

茅ヶ崎に行く時には、是非とも立ち寄りたいグッドバーです。