Compass№166

「Bar Noble」


  

「上質」

 

今宵は横浜関外、吉田町(よしだまち)へ。

 

ハマのディープな歓楽街、野毛と伊勢佐木町の間、

 

このあたりは「吉田町 Bar's St.」と呼ばれており、

 

カジュアルなバーからオーセンティックなお店まで

 

ハマのバーファン達が、ついついハシゴしてしまう

 

それぞれ個性の異なったバーが灯りを点し、共通して

 

言えるのはどのバーの扉を押しても、お店の奥からは

 

笑い声が聞こえてくる元気をもらえる街だということ。

 

そしてネクタイをきちんと締めたベテランドリンカー、

 

アメリカンな服装で、でもイイ飲み方をする若者、

 

酔っぱらって真っ赤になった新入社員のOLさん達、

 

そしてハマでも我が物顔する私の様な駄目ホッパー等、

 

同じカウンターに多彩なバーファンが一緒に揃うのも

 

ハマのバー独特の風景であり、東京銀座や大阪北新地

 

とはイイ意味で異なる空気感があるのが特徴だろう。

 

そんな吉田町の街角にあるお気に入りの1軒へ向かう。

 

小さな鉄格子のついたバードア、そしてドアの右側壁に

 

付けられた窓は線と円が美しい有機的なフォルムを

 

描き出し、フランスやオランダ、チェコで見かける

 

アール・ヌーヴォーを意識した造り込みがされている。

 

静かに扉を開けると、凛とした空気の中に美しく伸びる

 

ストレートカウンター前に流線型をした木製ストゥール、

 

その頭上にはシャンデリアが柔らかく輝き、緩やかに

 

止まり木を照らし出す。また個室も用意されており、

 

シャンデリアの明かりが注ぐテーブルには呼び鈴と

 

して英国ベルが準備されている。チリンチリンという

 

美しい音色が個室から聞こえてくるのも良いものだ。

 

まさに店名の通り、上質で格調高いバーなのである。

 

「Bar Noble」。

 

 


「教会」

 

オーナーバーテンダーは白色のバーコートがよく似合う

 

美丈夫と呼ぶに相応しい長身バーテンダー、山田高史氏。

 

箱根、後北条氏で有名な城下町、小田原市のご出身であり、

 

元々は会社員であった山田さんだが、バーの魅力、そして

 

バーテンダーの技術に取り憑かれ、意を決しこの道へ転身。

 

2004年に自店をオープン後も一層研鑽し、横浜を代表する

 

バーテンダーの一人として多数カクテルコンペティションにも

 

出場。2010年に高松で行われた第37回全国バーテンダー技能

 

競技大会では長年の念願であった総合優勝を果たし、更なる

 

舞台である世界に対して日本人としてのカクテルを、そして

 

横浜という地のカクテルを世界中の飲み手に味わってもらい、

 

Nippon&Yokohamaの魅力を広めようとするチェレンジ精神に

 

溢れるバーテンダーであり、そのスピリットは長年の空手の

 

鍛錬によるものかもしれない。あくまで謙虚なスタンスで

 

静かにお客様と向き合う接客サービスも「押して忍ぶ」の

 

武士道精神に通じており、世界を相手に冷静さを欠くことは

 

決してないに違いない。またカクテルにとどまらず、洋酒の

 

造詣やシガーの知識も深く、ビンテージボトルに輝く琥珀の

 

液体をアンティークグラスへと静かに注ぐ姿がまた美しい。

 

壁や天井の白壁と山田さんの白バーコート姿を眺めつつ

 

グラスを傾けているとなんだか教会や修道院の牧師さんに

 

聖杯を頂いているような気がしてきた。とっても有り難い

 

と思いはじめたということはそろそろ酔ってきたのかも

 

しれないなあと自分を戒めつつ、モンテクリストの4番を

 

吸いながら、締めに極旨な一杯をオーダーするとしようか。

 

 


「Bar Noble」

 

神奈川県横浜市中区吉田町2-7

 

VALS吉田町1F 

 

045-243-1673

 

http://noble-aqua.com/

 

最寄り駅

 

JR根岸線関内駅より徒歩2分

 

横浜市営地下鉄関内駅より徒歩3分

 

お店一口メモ・・・

 

横浜吉田町といえば割とカジュアルで若いお客さんが

 

多いお店が多い中、老若男女、バーを愛する方々が

 

地元横浜のみならず都内からもわざわざ足を運ぶ

 

落ち着きある雰囲気の正統派バーとなっています。

 

内外装ともに当サイトでもご紹介させて頂いた

 

渋谷の名店「Le Zinc」の雰囲気がどことなく

 

あるのは、山田さんが大好きなLe Zincをご参考に

 

お店づくりをなさったからとのことです。

 

洋酒、シガーだけではなくフードにもしっかりと

 

力を入れており、女性同士ならば美味しい料理と

 

ワインやシャンパンも愉しむことが出来るバーです。