Compass№154

オーセントホテル小樽「キャプテンズ・バー」


  

「船長」

 

小樽に行く機会があればたとえ宿泊は出来なくとも

 

是非とも立ち寄っていきたいホテルバーがある。

 

JR小樽駅から近く、アーケード街:都通りにある

 

オーセントホテル小樽、その1Fに灯りをともす

 

素晴らしきメインバー「キャプテンズ・バー」。

 

このお店のマネージャー野田浩史氏をはじめとする

 

実力派バーテンダー達のカクテルを味わうためだ。

 

夕刻、札幌駅から快速に乗って小樽駅へ降り立つと

 

スッと潮の香りとともに石原裕次郎の曲が流れ出し、

 

ああ小樽へ来たんだなと、少し旅愁をも感じながら

 

どことなく昭和の香りが漂う「都通り」を目指す。

 

昭和8年創業の純喫茶「光」をはじめ、都通りには

 

老舗店が並び、古き良き時代へ思いを馳せずには

 

いられない。その景観に溶け込みながらも近代感を

 

併せ持つのがオーセントホテルであり、地元小樽の

 

洋酒ファンが集まるのが1Fのキャプテンズ・バー。

 

その名の通り、豪華客船のキャプテンがシガーを

 

吹かしながらモルトを楽しみそうな雰囲気のある

 

どことなく船室を思わせるアーチ型をした天井が

 

印象的なカウンター席が、私はとても好きである。

 

久々にそのカウンターへと足を運ぶと、「美丈夫」と

 

呼ぶに相応しいマネージャー野田浩史氏が迎えてくれる。

 

野田さんは札幌ご出身のバーマンだが華がある男だ。

 

幼い頃を京都で過ごしたご経験もある野田さんの

 

どことなく若い頃の堤真一を思わせる端正な顔立ちは

 

男性である私でさえも惚れ惚れしてしまう。もちろん

 

私にその気は全く無いことを一応付け加えておくが。

 

そんな野田さんはカクテル技術も折り紙付きであり、

 

2005年にはプロフェッショナルバーテンダー機構の

 

カクテル・コンペティションに於いてグランプリ受賞、

 

2007年にはサントリーザ・カクテルアワードに於いて

 

フリー作品部門で優秀賞受賞など数々入賞経験を持つ

 

一流バーテンダーとしてバーファンにも広く知られる。

 

 


「眼鏡」

 

ホテルバーというと仕入れ先が一定に絞り込んであり

 

パーソナルバーのようにマニアックな洋酒ボトルは

 

なかなかお目に掛かることが出来ないが、このバーでは

 

お客様のニーズに応える形で、通称SMWSと呼ばれる

 

「ザ・スコッチ・モルト・ウイスキー・ソサエティ」の

 

カスクをはじめ、希少なボトル達がバックバーに並ぶ。

 

もちろん小樽と言えばニッカウヰスキー余市蒸留所も

 

間近にあることから、蒸留所限定発売の原酒などを

 

所望するお客様も多くモルトバーにも引けを取らない

 

ラインナップが揃っていると言えよう。しかしながら

 

私のオススメはやはりカクテル。まるで居合いの如く

 

正した姿勢から振り抜かれる野田さんのシェイキング。

 

そこから生まれるカクテル達は、氷片の一つ一つが

 

細かいメッシュを通したかのように微粒化しており、

 

液体を十分に冷やしながらも、素材本来の味わいを

 

最大限引き出す工夫がなされている。またトマトを

 

使ったカクテルならば生トマトをバーナーで軽く炙り

 

甘みを高めてから使用するなど、一手間二手間もかけ、

 

素材の味わいを高めてから提供するのも野田流である。

 

また、「仕事の流れ」というものを非常に大切にする

 

バーテンダーであり、「MTW」のサイクル、つまり

 

作る(Made)、話す(Talk)、洗う(Wash)の3つが

 

時計の針のようにクルリと回転しており、カウンターや

 

バックバーがキチンと整理整頓された状態にあるのだ。

 

これは飲み手側にとって大変清々しくお酒を楽しめる

 

だけではなく、バーテンダーがキチンとした仕事で

 

旨いカクテルを供してくれる確信をもたらしてくれる。

 

そんなまめなご性格の野田さんは一度お越しになった

 

お客さんの情報も一つ一つデータベース化し、次に

 

ご来店なさった時にもサッとそのデータを確認して、

 

好みの味わいを頭に入れつつカクテル調酒作業に入る。

 

このようなとても細かい仕事の積み重ねがあるからこそ、

 

野田さんのカクテルはどれも自信に満ちあふれた味わいに

 

仕上がっているのだろうなと思いつつ今日も杯を傾ける。

 

 


オーセントホテル小樽「キャプテンズ・バー」

 

北海道小樽市稲穂2-15-1

 

オーセントホテル小樽内

 

0134-27-8100

 

http://www.authent.co.jp/

 

最寄り駅

 

JR小樽駅より徒歩 5分

 

お店一口メモ・・・

 

港町:小樽を代表するホテルバーです。

 

地元のお客さんが多く、女性お一人のお客さんも

 

素敵にカクテルを楽しんでいる姿が印象的です。

 

野田さんをはじめ、2007年PBOカクテルコンペで

 

MVPに輝いた八重樫猛氏、2006国分ヤングバーメン

 

全国カクテル大会で準優勝した尾路直治氏など

 

実力派バーテンダーが温かくもてなしてくれます。