Compass №153

「BAR LYTTON」


  

「西川」

 

今宵は岡山の夜を楽しむ。中国地方一の握りとも言われる

 

大雲寺前の寿司店「魚正」で、寿司職人である女将を

 

独り占めして瀬戸内や北海道の魚介類について語り合う。

 

お酒を呑みながら頂くのは、もちろん瀬戸内の魚達だ。

 

鰆(さわら)やままかりといった北海道ではなかなか

 

お目にかかれないネタを頬張ると思わずニヤリとする。

 

常連さんの多いお店ではあるが、一見さんとて決して

 

気も手も抜かない大変気さくな女将のファンも多い。

 

絶品の握りを堪能した後はもちろんバーへと足を運ぶ。

 

岡山市の中心街を流れる「西川」沿いを北へゆっくりと

 

歩きながらその街並みを眺めるのも結構イイものだなあ。

 

その道中、少し西へ入った所に目指すお店の看板が見える。

 

「BAR LYTTON」。

 

入口の大きな木製バードアを開けると、開放感に富んだ

 

バーフロアが広がる。左手にカウンター席、中央には

 

木々を配したエントランスを挟んでテーブル席があり、

 

更にその横の階段を上るとロフト席まで用意されている。

 

その高級ホテルのトップラウンジバーをも彷彿とさせる

 

贅沢空間は東京・銀座でも通用しそうな佇まいと言える。

 

一人客である私はもちろんカウンター席へと向かい、

 

ほぼ中央のストゥールに腰掛けて一度大きく深呼吸する。

 

こうすることで肩の力がスッと抜けて落ち着けるのだ。

 

それから両翼に大きく広がるバックバーを確認すると、

 

中央棚にはウイスキー樽を配し、左右には約500種の

 

洋酒が整然と並び輝いており、まさに壮観と言える。

 

更にワインセラーには200種程度のワインを常時

 

ストックしてるそうで、ワインバーとしての使い方も

 

シッカリ出来るとても懐の深い本格バーと言えるだろう。

 

 


「眼鏡」

 

私の眼前には素敵なメガネ姿の女性バーテンダーが立つ。

 

BAR LYTTONチーフマネージャーを務める大橋範子女史。

 

私と同世代なので「メガネっ娘」と呼ぶのは失礼な話だが

 

バーテンダーとしては少し珍しいインパクトを感じる彼女。

 

しかしその接客術の素晴らしさは私も認めるところであり

 

お客様との対話を大切にし、もてなしの心が伝わってくる。

 

彼女はしばしば「縁」という言葉を使う。これも何かの縁と

 

とても嬉しそうに話してくれる。バーテンダーの仕事に

 

就いたのも縁。今宵、私とこうしてココで語らうのも縁。

 

その全ての縁を大切にし、サービスを提供しようとする

 

心がけが洗練されたスマートな接客と豊富な洋酒知識習得に

 

結びついているのであろう。そんな彼女が作るカクテルが

 

また極めて旨い。ギムレット、サイドカー、マティーニ。

 

女性らしい柔らかさを感じつつも一本線がピンと張った

 

若い頃の秋吉敏子女史のジャズピアノを聞いているかの様な

 

深く豊かな味わいで、しっかりと練習を積んできたからこそ

 

現れてくる「ゆとり」を持ったカクテルに仕上がっている。

 

フードメニューもパスタにエスカルゴ、人気のオムライスなど

 

女性同士がワインに合わせて楽しめそうなメニューが充実。

 

大箱のお店ということもあり、仲間大勢でパーティーっぽく

 

利用するってのもアリだが、静かにお酒をと会話を楽しむ

 

一人客の皆さんにも配慮は必要であろう。ふと周りを見ると

 

いつの間にかカウンターは満席になっている。岡山の飲み手の

 

皆さんは実に気さくで温かく、大橋さんも交えて会話も進む。

 

いつのまにか彼女の彼氏の話になったり。それもまた縁だ。

 

岡山の人たちがこれほど温和なのは、瀬戸内の気候によって

 

生み出される温かな風土や気候がそうさせているのだろうか。

 

老舗にもかかわらずどこか気が休まるグッドバーである。

 

 


「BAR LYTTON」

 

岡山県岡山市幸町3-9 

 

第2友沢ビル1F

 

086-227- 9200

 

最寄り駅

 

JR岡山駅より徒歩 8分

 

お店一口メモ・・・

 

岡山を代表する老舗バーの一つです。

 

カウンター9席、テーブル30席もある大箱ながら、

 

スタッフは常にテーブルフロアへも気を配っており、

 

テーブル席のオーダーにもスッと対応してくれます。

 

地元岡山のお客さんが中心ですが、出張族なども

 

気軽に利用できるお店です。遅い時間は混み合って

 

多少ガヤガヤしますので、出来れば早い時間に伺い、

 

カウンターでお酒と会話を楽しんでみてください。