Compass №150

サントリー白州蒸溜所「Bar Hakushu」

 


 

 

 

 

「野鳥」

 

梅雨の晴れ間にJR新宿駅から特急に乗って山梨へ。

 

目的地は小淵沢にある「サントリー白州蒸溜所」。

 

大都市東京から大自然溢れる山梨への列車一人旅は

 

なかなかイイものであり、右の尻ポケットに入れた

 

モルトウイスキー入りのスキットルを窓の側に置いて

 

次々に移り変わる風景を眺めながら、ちびりちびりと

 

ヤルのは何とも言えない楽しさ、そして旨さがある。

 

出発から約70分、特急あずさは小淵沢駅へと到着。

 

その駅前からタクシーに乗り込んで10分も走ると

 

まさに「森の蒸溜所」の名に相応しい白州蒸溜所へ到着。

 

ハッとするほどの深き緑色の森に囲まれ、野鳥たちの

 

さえずりが心を和ませてくれるウイスキーの森を進むと

 

待ちに待った白州蒸溜所の美しき建物群が見えてくる。

 

この白州蒸溜所は私の生まれ年、1973年操業開始。

 

そう思うと急に親近感が沸いてきたりするもんである。

 

「白州ウイスキー蒸溜所ガイドツアー」のスタートは

 

工場敷地内にある「ウイスキー博物館」から始まる。

 

ここから発酵、蒸溜、貯蔵といったウイスキーの製造の

 

過程を見学することが出来る。見学コースの最後には

 

見学専用バスに乗車し、ウイスキー樽製作作業場へ。

 

ここではウイスキー熟成のキーポイント作業であり、

 

一度使用した酒樽の内側を樽職人がバーナーで炙り

 

その樽に残存したアルコール分を飛ばして再利用する

 

「リチャー」と呼ばれる作業を目にすることが出来る。

 

炎が樽外まで立ち上ったかと思うと一杯の柄杓の水を

 

パッと職人が樽内へ放つ。その瞬間、樽内が水蒸気に

 

包まれ無酸素状態となり一瞬にして火が消えるのだ。

 

それはまるでマジックを見ているような瞬間であり、

 

見学者から「おおっ」という声が上がる定番である。

 

 

 

 


 

 

 

 

「白兎」

 

蒸溜所見学が一通り終わるといよいよお待ちかねの試飲。

 

無料試飲でスタンダードを楽しむのもイイし、普段は

 

高くてなかなか飲めない限定モルト達を格安で楽しめる

 

有料試飲コーナーでくいっとヤルのもまたイイものだ。

 

私は贅沢にも白州1981年と山崎1979年の二杯を注文。

 

辛口ながらも口に広がる豊かな味わいに思わずニヤリ。

 

見学コースによってはゲストルーム「バー白州」で

 

モルトをゆっくり味わうことも出来る。「バー白州」は

 

かつて銀座8丁目に灯りを点し、名店として有名だった

 

「バーうさぎ」のカウンターをわざわざ移築したバー。

 

白布がきちんと掛かった懐かしい丸形のストゥールに座り

 

当時と変わらないカウンターに肘をついてグラス片手に

 

目を閉じると当時の思い出が瞼の裏にすぐ浮かんでくる。

 

この「うさぎ」は中村勘九郎のお母さんであり、歌舞伎の

 

伝説的な名優、六代目尾上菊五郎の長女、波野久枝さんが

 

開いたバーであり、作家の開高健氏や、ミステリー作家の

 

巨匠である江戸川乱歩氏も愛したカウンターなのである。

 

まだ若輩者であった私は開高さんの読み物が大好きで、

 

生意気にも氏が通ったお店で同じ空気を吸ってみたいと

 

背伸びして諸兄の間に交じってグラスを傾けたりもした。

 

戦後を代表する銀座のバーであった「バーうさぎ」へ

 

通っていたお客さんが昔を懐かしんでわざわざ遠方から

 

足を運ぶケースもあるそうである。これからも白州の

 

「うさぎ」として是非利用され続けることを切に願いたい。

 

 


 

 

 

サントリー白州蒸溜所「Bar Hakushu」

 

山梨県北杜市白州町鳥原2913-1

 

0551- 35-2211

 

http://www.suntory.co.jp/factory/hakushu/

 

最寄り駅

 

JR中央本線小淵沢駅よりタクシーで10分

 

お店一口メモ・・・

 

ジャパニーズモルトファンの方なら

 

是非とも一度は足を運びたい自然豊かな

 

南アルプス「森の蒸溜所」こと白州蒸溜所。

 

試飲コーナーなどの他に、場内に併設された

 

レストラン「ホワイトテラス」では白州の

 

モルトを飲みながら「岩魚と山女の燻製」など

 

地元で取れた魚や野菜の料理をゆっくりと

 

オープンテラスで楽しむことも出来ますよ。