Compass №149

「BAR HARBOUR INN」


 

「潮風」

 

そのお店は扉を開けた瞬間に潮風を感じる。

 

スコットランドアイラ島のロッホインダール湾から

 

ボウモア蒸留所へと吹き入るあの潮風なのである。

 

不思議な感覚にとらわれながらカウンター席に座ると

 

白いワイシャツに黒のベストをキッチリと着こなし

 

理知的なメガネが実に良く似合う笑顔の素敵なオーナー、

 

藤田敏章氏がとてもやわらかく私を迎え入れてくれる。

 

壁に掛けられたボウモアにゆかりのある絵や写真たち、

 

バックバーに並ぶ圧倒的なボウモアボトルコレクション。

 

ああ、潮風は目の前から吹いていたかと静かにうなずく。

 

私がお店に入った時にはまだ空いていたカウンター席も

 

ギムレットを飲み干すわずかな時間で埋まっていく。

 

常連のお客さんが中心の構成であるが女性が多いのに

 

少し驚かされた。口開けでバーにお酒を愉しみに来る

 

女性客が多いお店は東京でもあるようで無いと思う。

 

それだけ藤田さんのお店が安心してくつろげるお店だ

 

ということの証であろう。スコッチウイスキーを愛する

 

藤田さんがアイラ島へ訪れた際にボウモア蒸留所近くの

 

あるINNに宿泊した。アットホームな心温まるその宿で

 

出会ったご主人の本当に生き生きとしたお人柄に惚れ、

 

ご自身が独立なさる際にその宿名を店名に頂いたそうだ。

 

バードアにはその元ご主人であるSCOTTさんの手形を

 

象った真鍮が左右に埋め込まれており、とても印象的。

 

きっと藤田さんはその素敵な宿のパブで一杯やりながら

 

自分のやりたいお店と重ね合わせたに違いないだろうな。

 

一日の疲れを癒し明日への活力を養うアイラ島の良宿。

 

その想い出が詰まった名前、BAR「HARBOUR INN」。

 

 


「美翼」

 

一流店にもかかわらず、どこか肩の力が自然と抜けるのは

 

藤田さんのお人柄の良さがそうさせるのは言うまでもないが

 

それだけではなく随所に魅力があるバーだからだろう。

 

前述のボウモアを中心としてシングルモルトの品揃えは

 

大阪市内のバーでも屈指であり、関西のモルトファンなら

 

誰もが知るお店となれば自分の持つ財布の中身もついつい

 

気にしてしまうところだが、ノーチャージな所が嬉しい。

 

これなら確かに若い女性のお客さんが多いのもうなずける。

 

そして私が何より魅力に感じてしまうのは藤田さんが作る

 

カクテル達のその素晴らしい味わいである。1996年に

 

サントリーカクテルオブザイヤーを受賞した「美しい翼」の

 

意味持つ藤田さんのオリジナルカクテル「ベル・エール」は

 

ブランデーと黄桃のピーチリキュールにレモンジュースと

 

少しのブルーキュラソーを沈めた鮮やかな緑色の一杯。

 

蝶がデコレーションされており、緑豊かな森に舞う様子を

 

イメージさせるそのカクテルは、ピーチ本来の丸みのある

 

甘さの中にスッと感じる熟成ブランデーの豊かな香りが

 

優しい気持ちにさせてくれる完成度の高いカクテルであり

 

その味わいからは藤田さんの実直なお人柄が伝わってくる。

 

ギムレット、サイドカーといったスタンダードカクテルも

 

さすが関西を代表するヴェテランバーテンダーと思わせる

 

安心感と旨味がタップリの仕上がりであり、旬のフルーツを

 

使ったカクテルも大変人気があるそうだ。普段はそれほど

 

注文しないフルーツカクテルだが、つい食指が動きそうである。

 

 

 


「BAR HARBOUR INN」

 

大阪府大阪市北区芝田1-3-7 

 

マルシェ芝田3F

 

06-6371- 8009

 

http://www.barharbourinn.com/

 

最寄り駅

 

梅田駅より徒歩 2分

 

お店一口メモ・・・

 

大阪梅田駅、新阪急ホテルすぐ側の路地を

 

入ると「BOWMORE」の文字が書かれた

 

立て看板に灯りが点いていると思います。

 

階段を上って手形が特徴的な扉を開けると、

 

そこにはとても落ち着いたバー空間が広がり

 

オーナー藤田さんが静かに迎えてくれます。

 

モルト良し、カクテル良し、価格良しの

 

バー初心者にも嬉しいお店だと思います。

 

出来れば一人か二人でゆっくりしてみたい

 

大変居心地の良いグッドバーだと思います。