Compass №146

「バーかつらぎ」


 

「帰国」

 

十勝平野のほぼ中央、十勝地方の中心都市「帯広」。

 

その地名の由来はアイヌ語で「オペレペレケプ」、

 

和訳すると「川尻が幾つにも裂けている所」の意味。

 

人口約17万人を擁する十勝地方の中心都市として

 

発達するこの都市は夏と冬との寒暖の差が大きく、

 

夏は30度以上となり、冬は零下20度まで下がる

 

こともある北海道内陸部の中核都市の一つである。

 

2月に訪れたこの日もマイナス14℃まで冷え込み、

 

路面はブラックアイスバーンと呼ばれる危険な状態。

 

交差点のあちこちでキュルキュルとスリップ音が響き

 

我々も足下を注意しながら一歩一歩ゆっくりと歩む。

 

話は変わるが帯広の住所表記について少し説明すると

 

札幌が「北○条西△丁目」と南北が先に来るのに対し

 

帯広は「西△条北○丁目」と東西が先に来る表記であり

 

札幌式に慣れている私にとっては何か変な感覚がある。

 

今宵訪れるBarは西2条南10丁目、「バーかつらぎ」。

 

オーナーバーテンダーの桂木英里女史は帯広市ご出身。

 

ここ帯広市内の病院に栄養士として勤務していた頃に

 

カナダへ単身渡った際に偶然立ち寄った一軒のバーで

 

出会ったバーテンダーの仕事の素晴らしさに惹かれ、

 

日本へ帰国後、その道への転職を決心したそうである。

 

銀座「BAR FOUR SEASONS」女性バーテンダーであり

 

第3回ビーフィーター国際バーテンダーズ・コンペにて

 

ロングカクテル部門に於いて日本人として初優勝した

 

藤谷寛子女史が当時帯広で営んでいたバー「真藤」にて

 

その素晴らしい調酒技術やサービス、調理技術を磨き

 

「バーかつらぎ」を開店。女性らしさを随所に感じる

 

優しい空気がスッと流れるお店を営んでいらっしゃる。

 

 


「感謝」

 

カウンターは11席。 地元のお客さんでほぼ満席だ。

 

「ふるさん、道中の日勝峠も吹雪いていたそうですが

 

わざわざ遠くからお越し頂き有り難うございます。」と

 

桂木さんは深々と頭を下げる。「ありがとう」の言葉を

 

とても大切にする桂木さんは例えどんなに忙しくても、

 

お客様にお礼の言葉を掛けることを忘れることは無い。

 

ストゥールに座るとスッと差し出されるお通し料理、

 

これがまた素晴らしい。プリプリッとした生ホタテに

 

軽く火を通して特製ソースをかけた一皿は、さすがに

 

海外での調理師経験もある桂木さんが腕によりを掛けた

 

料理と言える盛りつけ、味わいともに申し分ない品だ。

 

この日替わりオードブルをお目当てにいらっしゃる

 

お客様も多いというのも頷ける完成度の高さを見せる。

 

さてドリンク。やはり真藤仕込みのカクテルを呑もうか。

 

ジントニック、ギムレット、マティーニと杯を進めつつ

 

銀座の「テンダー」「ル・ヴェール」「スタア・バー」と

 

バー巡りをしてきたという桂木さんと話は盛り上がる。

 

「銀座は全く右も左も分からないから困りましたわ。」と

 

話す桂木さんの少しはにかむ顔が実にチャーミングだ。

 

肝心のカクテルはシッカリ骨格のある豊かな味わいで

 

いつも穏やかで優しい桂木さんだが、内に秘めたる!?

 

彼女の芯の強さというか度胸みたいものを感じるもの。

 

しかもその中には女性らしい繊細なエッセンスもきちんと

 

表現されており、桂木さんがいかに研究熱心であるかが

 

伝わってくる仕上がりである。カウンター、バックバー、

 

フロアともに大変落ち着いた雰囲気ではあるが、そこで

 

交わされる会話は笑いに満ちており、ここ帯広を代表する

 

本格バーの一つとして今後も注目されていくことだろう。

 

 

 


「 バーかつらぎ」

 

北海道帯広市西2条南10丁目4

 

銀座ビルB1F

 

0155-24- 8865

 

最寄り駅

 

JR帯広駅より徒歩5分

 

お店一口メモ・・・

 

天井から吊り下げられた灯りに照らされて輝く

 

美しきバーカウンターの向こうで笑顔が素敵な

 

桂木さんが優しく迎えてくれる素敵なバーです。

 

「感謝」という気持ちを常に忘れない彼女が作る

 

一杯一杯のカクテルには愛情が溢れております。

 

お酒、そして料理を愉しみながら日々の疲れを

 

癒したくなる「おもてなし」タップリのお店です。