Ｃｏｍｐａｓｓ №１４５
「ＢＯＵＲＢＯＮ ＣＬＵＢ」
「７時」
沖縄那覇のメインストリート「国際通り」の東端にある
１９７２年開店の老舗バー「BOURBON CLUB」を訪ねる。
沖縄の夜はその始まりが遅い。東京の感覚で午後５時に
さて口開け行こうかと思ってもまだ居酒屋などは準備中。
バーとなると大半のお店が午後８時からオープンであり
ここ「BOURBON CLUB」のように午後７時から飲める
バーは珍しいと言えよう。看板の灯りが点るのと同時に
入り口をくぐると美しいロングカウンターがスラッと
正面に向かって伸びている。照明はやや暗めにしてあり、
庭の飛び石のように円形のテーブルライトの明かりが
整然と各ストゥール前のカウンター板上に並んでいる。
右側にあるバックバーの酒棚は６段構えになっており、
相当な収納力を持つのであるが、それも全てボトル達で
埋め尽くされている様には圧倒されずにはいられない。
ちょうど真ん中当たりのストゥールにゆっくり腰掛けて
ウォッカ・トニックをお願いすると、短髪で物腰柔らかい
店主の安田智宏氏が手早い所作でカクテルを作り上げる。
早速差し出されたものを一口頂く。実に爽快で苦旨い。
東京や大阪で飲むウォッカ・トニックよりも何故だか
ここ沖縄で飲むヤツの方が旨く感じてしまうのはやはり
沖縄が持つ独特の温かさ、それは人も空気も含めてだが
たぶんそれらがエッセンスとして加わるからなのだろう。
この一杯に相応しいアテを安田さんにリクエストすると
生きのいい水ダコを使った「水ダコのカルパッチョ」は
どうでしょうか？と薦められ、迷わずそれをお願いする。
緑の香りがする優しいオリーブを使ったシンプルな一皿は
水ダコのコリコリッとした歯触りがたまらなく気持ちイイ。
そしてウォッカ・トニックはオリーブ油でマッタリした
口中をキュッと締めてくれる。この選択はさすがである。
「偉大」
次に200～300種はあろうという酒瓶達の中から選んだのは
店名にあやかってバーボン。「偉大なるおじいちゃん」こと
オールドグランダッドをオンザロックでもらうことにする。
口当たりの良いこのバーボンは飲めば飲むほどコク深さに
気付かされるイケてるバーボンであり、そのファンも多い。
禁酒法時代前後のオールドボトルともなると、その味わいは
バーボンという位置づけをとっくに通り越した雑味など無い
まさに「命の水」の名に相応しいひたすら深い味わいとなる。
しかしやはり沖縄で飲むとなるとスタンダードで始めたく、
そいつをゆっくりヤリながら、安田さんと酒棚談義になる。
「地震が来たらうちのボトルの大部分がアウトでしょうね。」
「釧路や新潟、福岡のバーでは棚の前部分に金属製のガードを
取り付けたりしてますね。新潟では効果があったそうです。」
「おお、そうなんですか。ぜひ参考にさせて頂きますわ。」
こんなやりとりで和やかに会話が進む。バーの会話ってのは
たとえ初めて入ったお店でも、こんなちょっとした話題で
次第に楽しく膨らんでいくものである。その後はモルト、
私の大好きなアードベッグ。塩っ気が強い自家製ハムとの
相性が良くついつい２杯目も頂いてしまう。そんな私の左隣、
奥の席には女性お二人のお客さんが女性バーテンダーと
カクテルの話題で盛り上がっている様子。時折口元へ運ぶ
パスタがこれまた旨そうで料理メニューにも充実感がある。
最後はシャルトリューズのヴェール。大変豊かなハーブ香が
鼻孔をくすぐりホッとさせてくれる。締めには最適の一杯。
「うちは田舎のバーですから。」と安田さんは控え目だが、
目隠しをされてこのお店に連れてこられたらココは銀座かと
思っても不思議ではない落ち着きのある素敵なお店であり、
那覇を代表するバーの一つとして今後がとても楽しみである。
「ＢＯＵＲＢＯＮ ＣＬＵＢ」
沖縄県那覇市安里１－３－１３
０９８－８６１－ ５６３４
最寄り駅
沖縄都市モノレール(ゆいレール)牧志駅より徒歩４分
お店一口メモ・・・
バー入り口には格調高きエンブレムが金色に輝き、
その奥には素晴らしいバー空間が広がっております。
バックバーにずらりと並ぶボトル群を眺めるだけでも
一見の価値がある素晴らしいオーセンティックバーです。
しかしながらチャージも大変リーズナブルでお会計は
私もビックリするほど良心的。国際通りで飲むなら是非。
