Compass №144

「Tafia」


 

「諸島」

 

旨いラムを呑みに西麻布へ。目指すは「Tafia(タフィア)」。

 

この店名「Tafia」はフランス語でラムの呼称の一つである。

 

西麻布交差点側「権八」とは反対側の焼鳥「浜の家」横を通り

 

ややしばらく歩くと南国ムードある店舗が見えてくるはずだ。

 

扉を開けるとまるでカリブ島のオシャレなカフェを思わせる

 

少し開放的な雰囲気に包まれた空間が広がり、真空管アンプの

 

スピーカーからは「サルサ」が流れ、そのムードを作り出す。

 

2008年春に開店6年目を迎えるTafiaは、この界隈では

 

ラム酒の品揃えがダントツと言っても過言では無いだろう。

 

カウンターのストゥールに腰掛けてオーナーバーテンダーに

 

バスペールエールの大きい奴一杯とオリーブの実をオーダー。

 

このオリーブの実が、すんごく旨かったりする。一息つこう。

 

「西麻布」といっても裏通りの住宅街の中に溶け込むように

 

佇むお店でありアットホームな雰囲気でとてもくつろげる。

 

オーナーバーテンダーは多東千惠女史。北海道旭川ご出身。

 

学生時代にバスケットボールで長年培った体力を活かして

 

9時間以上に及ぶ長丁場の営業時間を一人で乗り切る女性だ。

 

自ら体育会系ですとおっしゃる多東さんだがフットワークは

 

さすがであり、カリブまでポーンと行ってしまう事もある。

 

現地で実際にどのようなラムがどのように飲まれているのか、

 

人々はラムとともにカリブ料理やシガーをどう愉しむのかなど、

 

ラムに止まらずカリブ文化自体を体感し経験として持ち帰る。

 

そんな彼女は都内のモルトファンにも良く知られた広尾の名店

 

「ヘルムズデール」にしばらく勤めた後、ここ西麻布で独立。

 

新店のコンセプトをご自身が愛してやまないカリブと位置づけ、

 

ラム酒のみならず、料理、音楽、葉巻といったカリブの空気を

 

吸い込む事が出来るお店、即ち「西麻布のカリブ」を再現した。

 

 

 


「多様」

 

さて、いよいよ私もラムを愉しむことにする。銘柄はというと

 

多東さんは私がモルト呑みだということをわざわざ考慮して

 

イタリアのロッシ&ロッシ社の『ラム・ネイション』から

 

「デメララ・ラム」をチョイス。もちろん、ストレートで。

 

欧州向けらしくガチッとした骨格で、複雑さもあるその味は

 

シガーにも上手く合わせられそうな独特の風味を持っており、

 

旨いのでついお代わりをお願いする。多東さんは、どうぞと

 

静かにグラスを差し出してくれるが余計な事は一切言わない。

 

お客さんにこのお酒の説明を求められるならばそこで初めて

 

口を開くが、ご自身から進んで説明するというスタンスの

 

接客はあまり好まない。しかし、彼女のお酒への造詣深さは

 

酒棚に溢れんばかりの酒瓶達がずらっと並ぶバックバーを

 

眺めれば一目瞭然であり、お客さんも皆知っている事である。

 

多東さんに「もうちょっと癖のある奴を一杯もらえますか」と

 

お願いすると、ロゴマークがいかにもイタリア的デザインを

 

感じさせるサマローリ社の人気高いデメララ・ダークラムの

 

1991が登場。卓越したコクに思わずニンマリとしてしまう

 

大変旨いラムであり、濃厚だがバランスもなかなかである。

 

そしてフードメニューもカリブを意識したものが揃っており、

 

ザクッと切った茄子がタップリ入ったカレー「コロンボ」や

 

燻し具合が実に良いスモークチーズなど、手作り料理にも

 

しっかりと注力するのは女性オーナーのお店らしくてイイ。

 

アルコールが少し弱いという方なら、ミントの葉をよく潰した

 

カクテル「モヒート」も人気がある。さらには、今日はお酒を

 

止めておこうかなという方はキューバ産のコーヒーを楽しむ事も

 

出来るのだからラムファンならずとも足を運びたいお店だ。

 

一人でお酒を愉しむのも良し、仲間とワイワイやりながら

 

お酒を愉しむのも良しという多様性を持つ止まり木である。

 

 


「Tafia」

 

東京都港区西麻布2-15-14

 

ウエストポイントビル1F

 

03-3407-2219

 

最寄り駅

 

地下鉄六本木駅より徒歩15分

 

お店一口メモ・・・

 

まるで多東さんの「カリブの別荘」!?にでも

 

お邪魔した様なとてもアットホームなお店です。

 

その別荘でホームパーティーでもするような感覚で

 

仲間と盛り上がったりするのも良さそうですよね。

 

ゆっくり、ほんわりと流れゆく時間と空気の中で

 

お酒に料理、そして会話をゆっくり楽しみたいですね。