Compass №131
京王プラザホテル札幌 「CROSS VAULT」
「爛漫」
中世欧州の建築物内を彷彿とさせる店内に入ると
大変印象的な10mある一枚カウンターがどんと構える。
店名「CROSS VAULT」は中世ローマで発展した天井様式。
アーチ天井により広い天井下空間を実現できるものであり、
まさにこのBarに取り入れられている天井様式である。
フロアカーペットを進み、一番奥のストゥールへ座ると
若くも落ち着きのあるやや小柄な女性が迎えてくれる。
彼女は『MoninCup2006』ノンアルコール部門において
オリジナルカクテル「桜花~春爛漫」という作品にて
グランプリを見事受賞した実力派、菊池美風バーテンダー。
菊池さんは2004年日本ホテルバーメンズ協会MHD
ディアジオ・モエ・ヘネシー共催カクテルコンペ全国大会
部門優勝をはじめ、数多くの大会に於いて入賞経験を持つ
注目すべき笑顔の素敵な20代の女性バーテンダーである。
菊池さんは名寄市風連町ご出身で、銀座MONDE BARの
宮越波瑠奈バーテンダーと同郷。その縁があってお互いに
頼りになる先輩・後輩であり、良きライバルでもある。
まず一杯目はグレイグースのウォッカトニックで喉を潤し
菊池さんと去年1年で一番オーダーのあったカクテル話。
H.B.Aシニアバーメン、そしてP.B.Oバーテンダーでもある
佐々木範満氏も加わり、和やかな雰囲気で話は盛り上がる。
銀座「テンダー」の上田和男氏を尊敬して止まないという
佐々木さんも、大変素晴らしいサービスと技術を持つ方だ。
ショートカクテルで一番オーダーが多かったのはマティーニ。
これはやっぱな!というところだろう。ロングはジン・トニック。
その他、菊池さんオリジナルのオーダーが多かったとのこと。
この日もホテル内の和食店にいらっしゃるお客さんから
菊池さんのカクテルリクエストがあり、出前シェイクに
行ったりする売れっ子だがもちろん偉ぶることなど全くない。
「風船」
見慣れないMoninのリキュールボトルを取り出しながら
MoninCup賞品としてフランスに研修旅行に行って来たと
嬉しそうに話す菊池さん。目の前に置かれたボトルは
ラベンダーリキュールとバブルガムリキュールの2本。
もちろん日本へは輸入されていないレアボトルである。
「パリはとても日が長いので、まだ明るいのにボンソワと
声を掛けられて、時計を見るともう夜なんですよ~。」
などと土産話を色々聞きながら、とても濃厚で深いコクと
タップリと甘みのあるラベンダーリキュールを味わう。
「これ富良野で作ったら面白そうだな。」「そうですね。」
そんな会話が続き、お次はいよいよバブルガムリキュール。
おお、まさに子供の頃10円玉を入れてガチャガチャの様に
取っ手を回転させたら出てくる黄や赤、青の丸いガムを
噛んだときのアメリカンなバブルガムの味わいそのもので
これをリキュールにするMoninの発想も凄いものがあるが
後味もガムの味が引き、日本人には少々馴染まないだろう。
これは苦手だなと、口直しにギン冷えのギムレットを注文。
菊池さんが実に安心感のあるカッチリしたシェイキングで
手早くギムレットを仕上げ、静かにグラスへと注いでくれる。
スッと舌上から喉元えと通過する液体がバブルガムの後味を
さっと払拭し、普段の口内感覚をゆっくり取り戻してくれる。
ブレのないピンと一本筋のある仕上がりはさすが菊池さん。
昨年彼女はめでたくご結婚し、仕事もプライベートも充実。
今後もご活躍が益々期待される女性バーテンダーであろう。
京王プラザホテル札幌
「CROSS VAULT」
北海道札幌市中央区北五条西7
京王プラザホテル札幌1F
011-271-3276
最寄り駅
JR札幌駅・地下鉄札幌駅より徒歩5分
お店一口メモ・・・
ホテルバーへはあまり足を運ばない私ですが
菊池さんや佐々木さんにふと会いたくなって
お邪魔するのがこのバー「クロスボールト」です。
「顔の見える」ホテルバーメンである両氏が
お客様を気持ちよくくつろがせてくれます。
通えば通うほど味の出てくるバーと言えます。