Compass №127

「Cocktail Bar SPOON」


 

「屋根」

 

北海道のほぼ中心、「北海道の屋根」と呼ばれる

 

大雪山連峰を望む北海道第2の都市:旭川市。

 

目の前では待望の桜が咲き誇る6月の初旬だが

 

遠くに見える頂には白雪がまだまだ残っており

 

春と冬、二つの季節を同時に感じる少し奇妙な

 

この感覚にちょっと興奮しながら街を散歩する。

 

時計を見ると時刻は18:00。外はもう少し明るいが

 

今宵は旭川駅から割と近い一軒のバーへと向かう。

 

「Cocktail Bar SPOON」。

 

石造り風の佇まいの建物入り口にある西洋風の

 

小さな鋼製門があり、まるで童話の中に登場する

 

扉を連想させる美しい木製ドアをゆっくり押すと

 

店奥のライトアップされたバーカウンターの中で

 

とても小柄で可愛らしい岸上明日香バーテンダーが

 

せっせと開店の準備に取り掛かっている姿が見える。

 

カウンターのほぼ真ん中にあるストゥールに腰掛け、

 

まずはゴードン・ジンのジン・トニックをオーダー。

 

岸上さんはこのカクテルを作るのが苦手とのことだが

 

女性らしく丸味のある酸味良い味わいは私好みの一杯。

 

美味しいよと言ってお代わりすると彼女も嬉しそうに

 

「ふるさんがおっしゃるなら少し自信がつきました。」

 

と話しながら何やらポリタンクの水をカウンター内の

 

水タンクへ移し替えている。尋ねてみると営業日には

 

いつも車で近郊まで湧き水を汲みに行っているとのこと。

 

テイスティングさせてもらうとほんわか柔らかい中にも

 

キチッと力強さのある山崎蒸留所の水を思わせる良水で

 

ウイスキーともなかなか相性がイイのではないだろうか。

 

「オーナーは、もう少ししたら来ると思いますので。」

 

とのことだったので、岸上さんとゆっくりお喋りする。

 

岸上さんは若手ながら非常に勉強熱心な女性であり

 

銀座や札幌のBar、バーテンダー、カクテルについて

 

事細かく私へ質問を投げかけてくる彼女を見ていると

 

なんだか昔の自分を思い出すところがあるではないか。

 

是非ともこれから一歩一歩経験と実力を積みながら

 

旭川を代表するバーテンダーとなることを願っている。

 

 


「台所」

 

この日4杯目のカクテルをスッと呑み乾したところで

 

颯爽とした足取りでスレンダーな女性が入ってくる。

 

オーナーバーテンダー種村園枝女史。種村さんと言えば

 

旭川で名店と言われた「光亭」でチーフを勤めた後に独立。

 

世界各国からエリートバーテンダーを養成する講座である

 

IBAシンガポール「ジョンホワイトコース」を卒業し、

 

アジアパシフィックカクテルコンペティション優勝をはじめ

 

数々の大会で入賞のご経験を持つ注目すべきバーテンダー。

 

またソムリエの資格も持ち、ワイン等にも大変造詣が深く

 

お客様のリクエストに応じ、的確なドリンクアドバイスを

 

提供するトータルドリンクコーディネーターとも言えよう。

 

種村さんにまずギムレットをオーダーし、それを呑みながら

 

話は全国の女性バーテンダーの話へと進む。種村さんはよく

 

札幌「ドゥ・エルミタージュ」のオーナーバーテンダーとして

 

全国的にも有名なベテラン女性バーテンダー中田耀子女史に

 

雰囲気が似ていると言われるそうだ。私も時折中田さんの

 

所へはお邪魔させて頂いているのだが、確かにどことなく

 

お顔も似てるような感じがあり、落ち着いた雰囲気の中に

 

どこか茶目っ気がある所が中田さんに似ている気がする。

 

そんな種村さんに私にしては珍しくアレキサンダーを注文。

 

基本的に甘いカクテルはダメな私だが彼女の作る一杯は

 

ベースのブランデーをアイラモルト「ラフロイグ」に替えて

 

絶妙なバランスで仕上げたものであり、柔らかな甘さの中に

 

クッキリとラフロイグ独特の「磯味」が浮かび上がってくる

 

創作力に富む種村さんらしい素晴らしいカクテルである。

 

それを呑みながら店内を見渡すとカウンターや戸棚式バックバーが

 

大変女性らしい選定となっており、まるで種村さん家のキッチンに

 

いるような感覚を覚えるが、これも種村さんがお客様に

 

ゆっくりとくつろいでもらう為の空間作りなのであろう。

 

そんな種村さんの素敵な一杯に今宵も酔いしれるとするか。

 

 

 


「Cocktail Bar SPOON」

 

北海道旭川市2.3仲通り7丁目

 

0166-27-5488

 

http://www.spoonet.com/

 

最寄り駅

 

JR旭川駅より徒歩5分

 

地下鉄新宿三丁目駅より徒歩2分

 

お店一口メモ・・・

 

店内は木材がふんだんに使われており

 

とっても温かみある空間となっています。

 

そして種村さんをはじめスタッフ皆さんが

 

明るく元気!!会話も楽しくなります。

 

旬の果物を使ったフルーツカクテルなども

 

大変美味しいので女性にもオススメでしょう。