Compass №125

カクテルBAR 「ラピュタ」


 

「千年」

 

北海道の玄関、新千歳空港を構える「千歳市」。

 

市内には「支笏湖」もある自然と水が豊かな千歳市は

 

かつてアイヌ語で「シコツ(大きな窪地、又は谷)」と

 

呼ばれていたが、当時この地に多くの鶴がいたことから

 

1805年に「鶴は千年、亀は万年」の故事にちなんで

 

「千歳」と命名されたそうである。第二次世界大戦後は

 

進駐軍駐留地として街は栄え、歓楽街である「清水町」を

 

中心に飲食店も大変に繁盛したそうであり、その当時に

 

米兵の来るお店はあまりの混雑ぶりで立ち呑みするのは

 

当たり前。外で立って呑むこともあったということだ。

 

だが現在ではその歓楽街も人少なく寂れ感は否めないが

 

そんな街にあっても元気なお店というものは必ずある。

 

1991年10月開店、カクテルBAR『ラピュタ』。

 

「今晩は。」と言いながらバーの扉をゆっくりと開けると

 

カウンター内からは「おお、ふるさん、いらっしゃい。」と

 

オーナーバーテンダー青木正明氏の声がすぐ返ってくる。

 

まだ私が身体を全て店内へ入れてもいないのにどうして?

 

かというと青木マスターは心臓疾患、失明危機を経験し、

 

何とか一命は取り留めたものの視力に関してはほとんど

 

見えない状態のためお客さんの声を聞き分けているのだ。

 

ロマンスグレーに黒バーコートが大変似合う青木さんは

 

サントリー党でもあり、モルトからリキュールに至るまで

 

バックバーにはサントリー社の製品がずらりと揃っている。

 

そのラインナップの中で青木さんにどうぞ勧められたのは

 

山崎蒸溜所の樽出原酒15年貯蔵。早速グラスを口元へと

 

近づけるとパッとウイスキーの芳香が鼻孔の奥まで入り

 

その香りだけでもこの液体が長い時間を掛けて熟成したと

 

感じさせる豊かで奥行きある香り。スルスルッと喉奥へ

 

ウイスキーを流し込むと、味わいも長い年月が生み出した

 

呑み応え十分な味わいであり、フィニッシュも続く逸品。

 

ジャパニーズ・ウイスキーの実力をまざまざと見せ付ける

 

至福の一杯を呑みながら青木マスターとゆっくり語らう

 

くつろぎのひとときは今日一日の疲れを癒してくれる薬だ。

 

 


「支保」

 

青木マスターの目の代わりも務める3人の女性バーテンダー。

 

チーフバーテンダーまさこさんとよしこママ、メグちゃん。

 

休日にはバイクにまたがってよく出かけるんですよと話す

 

まさこさんはバーテンダー経験を15年以上積むヴェテラン。

 

北海道産のフレッシュフルーツを使ったカクテル作りを

 

青木マスターとともに積極的に進めてきた実力ある方であり

 

夕張メロンやらいでんスイカなど北海道を代表する果物を

 

タップリ使った見た目も鮮やかで味わい深い一杯を提供する。

 

そしてカクテルとともに私が是非特筆しておきたいのが、

 

ラピュタ特製のラーメンである。メニューにラーメンがある

 

オーセンティックバー自体が全国でも数少ないと思われるが、

 

しかもこれが何と言っても旨い。大変シンプルな昔懐かしの

 

中華そばを彷彿とさせる構成でラーメン好きな私を魅了する。

 

その他にも色々とメニューがあるのだが、よしこママが作る

 

一品料理がこれまた佳い。レストランシェフ顔負けの腕前だ。

 

そして創作力・調酒技術ともにグングンと力をつけている

 

メグちゃんとの会話は笑いに溢れ優しさに包まれている。

 

こうしたシッカリとしたスタッフの皆さんががいるからこそ

 

青木マスターもお身体の調子が決して良くはないのだが

 

カウンター内に凛として立ち続けることが出来るんだろうな。

 

オリジナルカクテルの「ラピュタのそよ風」を呑みながら

 

ほんの少しセンチメンタルな気分で千歳の夜は更けていく。

 

マスターにはこれからもお元気でカウンターに立ってもらいたい。

 

 


カクテルBAR

 

「ラピュタ」

 

北海道千歳市清水町3丁目

 

オータニビル2F

 

0123-26-4206

 

http://www.k5.dion.ne.jp/~laputa/

 

最寄り駅

 

JR千歳駅より徒歩15分

 

お店一口メモ・・・

 

アットホームな雰囲気がとても心地よく

 

まさに千歳の「天空の城」ともいうべき

 

オーセンティックバーだと思います。

 

20代前半の女性お一人のお客さんから

 

ご年配のお客様まで客層は大変幅広く

 

ゆっくりとお酒と料理、会話を愉しみたい

 

地域にしっかり密着したグッド・バーです。