Compass №124

BAR 「Le Verre」


 

「秋田」

 

「銀座六丁目」と言えば次々とBarをハシゴする

 

いわゆる「バーホッパー」の方々には有名な

 

『魔の三角地帯』と呼ばれる3つのBarがある。

 

ハードシェイクで有名な上田和男氏「TENDER」、

 

ロングステアマティーニ毛利隆雄氏「MORI BAR」、

 

そして今夜お邪魔するBAR 「Le Verre」である。

 

外堀通りを挟んで三角形を描くように3つのお店は

 

わずか1~2分で行き来できる距離にあることから

 

どのお店から始めても結局知らず知らずのうちに

 

3店ともお邪魔してしまう「魔力」がそこにはある。

 

上田さん、毛利さんとともにその魔力を持つ方が

 

秋田市ご出身のオーナーバーテンダー、佐藤謙一氏。

 

佐藤さんは銀座帝国ホテルのバーテンダーとして

 

二十年以上の間ご活躍し、かねてから念願であった

 

自店を平成9年にオープン。今やすっかり銀座Barの

 

顔のお一人だがご自身は開店した当時と全く変わらず

 

長身でソース顔の気さくなヴェテランバーテンダーだ。

 

まずは佐藤さんのオリジナルカクテル「Le Verre」から。

 

バナナリキュールを使った緑色甘口のカクテルであり

 

大変飲みやすい女性に是非オススメしたい一杯である。

 

先程佐藤さんが秋田生まれという話をさせて頂いたが

 

「Le Verre」には銀座Barではまず見かけないであろう

 

秋田名物「きりたんぽ椀」がフードメニューにある。

 

私も大好きな秋田郷土料理であるが、カウンターでは

 

その秋田料理「きりたんぽ鍋」と「しょっつる鍋」談義で

 

大いに盛り上がる。佐藤さんによるとこの2つの料理、

 

実はこれらを「食べる・食べない」という地域差があり

 

「きりたんぽ鍋」は角館など内陸部を中心に秋田全域で

 

食べる鍋であるが(ちなみに秋田では「たんぽ」という)

 

「しょっつる鍋」は男鹿など海側の地域に限定されるために

 

同じ秋田でも内陸の都市ではあまり見かけない鍋だそう。

 

さらには県北部能代市の方へ行くと「だまっこ」という

 

たんぽが団子状に丸まったものを食べることが多いそうで

 

店内の空気はすっかり秋田一色となり話は盛り上がる。

 

 


「台詞」

 

ちょっと一息つこうかとチーフバーテンダー三石剛志氏に

 

ハイボールをお願いする。ちょっと変わったスコッチでねと。

 

佐藤さんと同様になかなかの長身で清潔感のある三石さんは

 

九州長崎のご出身。バーテンダーの格好良さに大変憧れて

 

名古屋の大学まで辞めてこの世界へ身を投じ、最初は名古屋で

 

バーテンダーとしての道を歩んでいたが、縁があり銀座へ上京。

 

三石さんはご自身を振り返り、「正直言って井の中の蛙でした。」

 

と名古屋バーテンダー時代を振り返る。バーテンダーとして

 

自分の技術は高くずば抜けていると勝手に天狗になった時期も

 

あったそうだが、色々な経緯があって銀座でこの仕事を始め

 

鼻を根本からへし折られ、遊ぶ時間も無く調酒や接客の技術を

 

ひたすら鍛錬し「Le Verre」のチーフバーテンダーとなった。

 

「バーテンダーはとにかく女性にもてる」と先輩達に言われ

 

それがキッカケで学校を退学しバーテンダー業界へと入り

 

更には「銀座なんて大したこと無いだろう。」と思っていた

 

自分を思い出すと、とにかく穴が有れば入りたいですよ!と

 

今だから笑って話せる昔話をする三石さん。彼の姿勢からは

 

銀座のバーテンダーらしい落ち着きと確かな自信を感じ取れる。

 

「ふるさんなら、こんなハイボールはどうでしょうか?」と

 

差し出された一杯は「シンジケート58/6」のハイボール。

 

1958年にスコットランドの首都エジンバラの実業家だった

 

スミス氏が、たまたまとある貯蔵倉庫から樽詰後30年以上の

 

熟成ウイスキーを発見し、スコッチを愛する友人5人と共に

 

その全ての樽を購入して自分も含めて6人だけが楽しむための

 

ウイスキー造りを行い完成したものが「シンジケート」である。

 

「今日がこのボトル封切りなのできっと良いことがありますよ。」

 

そういう三石さんに、グラスの中の液体をグッと一口呑んでから

 

「久々に佐藤さんや三石さんとこの時間を過ごせたのが幸せだよ。」

 

と自分で言ってるのが恥ずかしい台詞で笑いが店内に広がり、

 

このBarに来るとホッとするのはこの温かい空気だと実感した。

 

 

 


BAR 「Le Verre」

 

東京都中央区銀座6-4-8

 

曽根ビル2F

 

03-3574-7551

 

最寄り駅

 

地下鉄銀座駅B7出口より徒歩5分

 

有楽町マリオンより徒歩4分

 

お店一口メモ・・・

 

銀座のBarファンなら誰もが知るお店ですが

 

こぢんまりとしたカウンターで呑む一杯は

 

まるで友人の家で呑んでいるようなくつろぎと

 

温かさがあり、ついつい長居してしまいます。

 

客層は40歳~60歳の男性が中心ですが

 

女性も飲みやすいカクテルも多いことから

 

女性同士のお客様もよく見かけますので、

 

Bar初心者の方や女性お一人でも安心して

 

お酒と会話を楽しめるグッドバーだと思います。

 

※大変残念ながらご閉店なさいました。