Ｃｏｍｐａｓｓ №１１７
「Ｂａｒ Ｋａｔｓｕ ＯＨＴＡ」
「港町」
札幌Bar事情はここ数年新たな動きを見せている。
ホテルバーメンご出身のバーテンダーの方々が
ススキノや円山エリアにて独立店をスタートさせ
街場独特のBar文化を少しづつ摂取しながらも
ホテルバーで培ったそのサービス・技術を活かし、
お酒と会話をゆっくり愉しむ空間を作り出している。
今宵訪れるBarはその代表的な一店と言えよう。
「Bar Katsu OHTA」。
バードアを静かにオープンして店内に入ると
北海道登別ご出身のオーナーバーテンダー、
山本寛斎氏デザインのベストが大変似合う
太田克彦氏が優しい笑顔で迎えてくれる。
中央のストゥールに腰を下ろすと眼前に立つ
ボンベイ・サファイアの美しいオブジェクトに
寄りかかるように巷で噂の『まりもっこり』が
何とも言えない不敵な笑みを浮かべながら
立つ姿に思わず吹き出しそうになってしまう。
まずはゴードンのジンでジン・トニックをオーダー。
お通しは竹輪と山菜の煮物などが盛られた３点盛り。
小鉢に盛られた素朴な「お袋の味」に舌鼓を打つ。
店内を見回すとミニチュア・ボトルのコレクションが
ずらりとレイアウトされており、その数３００種以上。
そのボトル達を眺めているだけでも嬉しくなってくる。
一杯目を飲み乾し、次はショートカクテルを呑もう。
カクテルコンペ全国大会での入賞経験を数多く持ち、
日本ホテルバーメンズ協会マスターバーメンでもある
太田さんにわざわざ作ってもらうカクテルなので
呑み手としても一工夫したいと思い「ボンベイ」を注文。
なぜボンベイかと言うと、北海道の港町：小樽や釧路の
Bar話が弾み、『そうだ、今日は港町カクテルで行こう』と
いうことで港町カクテルの一つ「ボンベイ」から開始。
続いて「横浜」「上海」と、世界をカクテルで旅してみる。
「流氷」
バーテンダー２０年以上のキャリアを持つ太田さんは
京王プラザホテル新宿のメインバーで経験を積んだ後、
同ホテル札幌がオープンする際にその第１期生として
メインバー「クロスヴォールト」のカウンターに立ち
北海道を代表するホテルバーメンとしてご活躍され、
２００２年には独立して「Bar Katsu OHTA」を開店。
ヴェテランらしい落ち着いた接客とその確かな技術は
多くのお客様達にくつろぎと満足感を提供している。
そして一方ではバーテンダー育成にも情熱を注ぎ込み
専門学校講師として次世代を担う若手を育てている。
太田さんが、一番頭を悩ませているのはお酒の仕入れ値。
ホテルバー勤務の頃は大量仕入れによりリーズナブルな
価格帯でウイスキーやカクテルなどを提供していたが
個人経営だとなかなか大量仕入れする事は難しいため
その値段の差というものがプレッシャーになると言う。
しかしながらそこはこの業界に長く身を置く太田さんの
幅広い人脈を活かして仕入れ方法もしっかりと確立し、
お客様が納得のいくプライスの実現を達成している。
よく冷えた「ニューヨーク」を呑みながら話題は変わり
以前お店で飼っていた「クリオネ」の飼育法について
太田さんが丁寧な口調で色々と詳しく説明してくれる。
オホーツク流氷の天使とも呼ばれる「クリオネ」は
実は巻き貝の一種であり、低温海水の水槽の中でしか
飼育することは出来ず、幼少期はプランクトンを食し
成長するとミジンウキマイマイという貝を食べるのだが
実は頭の角のように見える部分が口になっており
そこからパクッと食べてしまう肉食動物なんですと
太田さんが私の目をじっと見つめながら話す内容に
驚きつつ自分の知識として頭の中の手帳に書き込む。
ふとした会話の中で自分の知らなかった世界の扉が
パッと開くこともＢａｒでの大きな楽しみの一つだ。
私にとってＢａｒとは、ある意味で人生の学校だと
常々感じている事を深く再認識して帰宅の途に着く。
「Ｂａｒ Ｋａｔｓｕ ＯＨＴＡ」
北海道札幌市中央区南６条西３丁目
第二桂和ビル２Ｆ
０１１－５６２－５５５９
http://www.keiwabld.co.jp/tenpo/katsu.htm
最寄り駅
札幌市営地下鉄南北線すすきの駅から徒歩３分
お店一口メモ・・・
誠実さが溢れ、優しく落ち着きのある口調で
お話しになる太田さんとの会話が一日の疲れを
癒してくれること間違いないことでしょう。
女性だけのお客さんやバー初心者の方でも
とても温かく迎えてくれるグッドバーですので
是非ともゆっくりとお酒と会話をお楽しみ下さい。
Katsu特製カレー900円や道産牛のカルパッチョ900円など
料理類も充実しており、お食事も楽しめますよ。
カクテル750円～、ウイスキー650円～。
