Compass №105

カクテルコーナー「ラルセン」


 

「訛り」

 

東京を暑さを避けるかのように8月の札幌へ。

 

ここ数年札幌も暑い日が続くが「空気の乾き」が違う。

 

スッキリと乾燥した空気はやはり北海道特有のものだ。

 

久々に生まれ故郷であり青春を過ごした札幌に戻ると

 

やはり夜はススキノで呑もうということになるのは必然。

 

馴染みの小料理店で一杯やった後はバーへ行きたくなる。

 

今夜は南4条西5丁目にある第4藤井ビルの1Fへ。

 

1967年開店の老舗、カクテルコーナー「ラルセン」。

 

バーの扉を開けるとストレートに伸びたカウンターが

 

天井から下がるランプに照らされてイイ色に輝いている。

 

古き佳き時代のススキノの面影が今も色濃く残っており

 

ストゥールに座るとノスタルジックな空気が優しく私を包む。

 

ちなみに「ラルセン」とはデンマークのパイプ銘柄であり

 

パイプの煙が似合う落ち着いた雰囲気の止まり木である。

 

「お久しぶりですね。まだ東京に?暑くて大変でしょ。」

 

眼鏡の似合う岩手県宮古ご出身のベテランバーテンダー、

 

沼里一久氏が冷えたジントニックをさっと差し出してくれる。

 

その隣では福島県いわきご出身の斉藤正一バーテンダーが

 

氷屋から届いた氷塊をアイスピックで砕く音が響いている。

 

「北海道で水に浸すことを〈うるかす〉って言いますが

 

福島などでも〈うるがす〉って言葉を使ったりするねぇ。」

 

お二人の共通点はその優しい「東北弁」。ひたすら温かい。

 

東北弁と北海道弁とが融合したようなお二人の「訛り」は

 

カウンターに座るお客さん達の心を自然と和ませてくれる。

 

 


「姿勢」

 

初代日本バーテンダー協会会長であった長谷川幸保氏に師事し

 

銀座の名店「馬車屋」や「鴻之巣」でその技術を磨き

 

ススキノの名バーテンダーと言われたオーナーバーテンダー、

 

近藤利明氏がお亡くなりになり、かれこれもう5年が経つ。

 

NBA日本バーテンダー協会特別功労賞など数々の受賞し、

 

北海道におけるカクテル技術の普及やバー文化の発展に

 

大変寄与なさった方として愛され尊敬された方である。

 

その近藤氏の元でサービスや技術を学び、恩師の志を

 

お二人がしっかりと受け継いでバーの灯りを守り続ける。

 

常連さんも一見さんも分け隔てることなく豊かな時間と

 

サービスを提供するお二人の姿勢にはお店に対する愛情、

 

そしてお客様に対する愛情、そして何よりお酒を楽しく

 

美味しく飲む事を愛する気持ちが自然と伝わってくる。

 

そのためか女性お一人でいらっしゃるお客様も多く、

 

沼里さんや斉藤さんとの会話をお酒とともに愉しむ。

 

店内にはいつもお客様や両バーテンダーの笑い声が

 

絶えること無く、ほっこりとした時間が流れている。

 

さて、手作りピザをアテにハイボールを呑みながら

 

お隣の品の良い老夫婦ともすっかり話が盛り上がった所で

 

時計を見るとそろそろ最終の地下鉄が来る頃だ。

 

締めの一杯、ラスティネールをデュワーズでオーダー。

 

ウイスキー好きにはたまらない一杯で終えるとしよう。

 

 

 


カクテルコーナー「ラルセン」

 

札幌市中央区南4条西5丁目

 

第4藤井ビル1F

 

011-251-1961

 

http://www.larsen.jp/

 

最寄り駅

 

札幌市営地下鉄南北線すすきの駅より徒歩3分

 

お店一口メモ・・・

 

チャージ1,300円、ウィスキー900円~

 

カクテルは900円~1,000円程度です。

 

熱々で出てくる週変わりパスタ900円なども

 

かなりイイ味付けなのでオススメですよ。

 

沼里さん、斉藤さんお二人との会話が心地よく

 

肩に力を入れずにお酒を愉しめるお店ですので

 

バー初心者の方にもピッタリのお店と言えます。