Compass №104

「スタア・バー・ギンザ」


 

「機熟」

 

銀座一丁目「スタア・バー・ギンザ」。

 

お店へと続く階段を下りるとガラスドア越しには

 

早くも恰幅の良いオーナーバーテンダーの姿を

 

カウンターの中央に見つけることが出来る。

 

蝶ネクタイが似合うオーナーバーテンダーの岸久氏。

 

岸さんは銀座老舗バー「絵里香」の中村健二氏の元で

 

洗練されたサービスや調酒技術を約12年間学び

 

機が熟した2000年12月に独立店をオープン。

 

その岸さんと言えば1996年に世界39カ国から

 

120名が参加した3年に1度開催される世界大会、

 

インターナショナル・カクテル・コンペティションで

 

日本人として初めてロングドリンク部門で優勝するなど

 

国内外の大会でご活躍なさる一流バーテンダーである。

 

しかしそれを鼻に掛けることなど当然有るわけもなく

 

「体格がイイと目立つので大会などでは有利なんですよ。」

 

と言いながらシェイカーに数種の材料を手早く注ぎ込み

 

いつもと変わらぬスタンスで最高のカクテルを仕上げる。

 

その恰幅とは正反対に大変緻密でやわらかな味わいは

 

多くのカクテルファンのお客様を魅了し続けている。

 

シングルモルトウイスキーにも大変造詣が深く、

 

スコットランドを巡り、アイラ島にてウイスキーを学び

 

アイラ島特別民間親善大使にも任命されている方であり

 

バックバー中央にはその親善大使プレートが輝いている。

 

また文藝春秋から出版した「スタア・バーへようこそ」では

 

バーの愉しみ方、嗜み方を軽快な「岸」流に書き綴っている。

 

そして若手バーテンダーの育成にも大変熱心な方であり

 

スクール講師等を引き受け、技術指導に尽力なさっている。

 

 


「星酒」

 

そんな岸さんとは対照的に痩せ形で眼鏡が大変似合う

 

上野秀嗣チーフバーテンダーが冷製のオニオンスープを

 

お通しとして出してくれる。ほのかなシェリーの味が

 

口の中にホワッと広がる美味しいスープに舌鼓を打つ。

 

2000年に開催されたビフィーターカクテルコンクール

 

全日本大会ショートカクテル部門での優勝経験を持つ

 

上野さんは大学時代に米国への交換留学をした関係で

 

英語はお手の物であり、素敵な奥様もアメリカご出身。

 

上野さんと私とはお互いに札幌生まれということで

 

ススキノのラーメン屋や居酒屋話などで盛り上がる。

 

銀座「テンダー」の上田氏や銀座「5517」の稲田氏、

 

吉祥寺「WOODY」の田中氏などはじめ、ここ東京には

 

北海道ご出身、いわゆる「道産子」のバーテンダーが

 

多いので私もその故郷話でいつも和ませて頂いている。

 

アンティークのレザーソファーが美しいボックス席では

 

おそらく50歳半ばくらいの会社の部長クラスの男性が

 

私と同世代であろう30歳代の部下の方お二人とともに

 

「エディンバラでは数軒のパブを飲み歩きしてね。」などと

 

モルトを飲みながらスコットランド話に花を咲かせており

 

そのお客さんのグラスの中身が少なくなったところで

 

岸さんは素早い対応でさっと次のお酒をオススメする。

 

カウンターにいる時でも少し離れたボックス席への気配を

 

決して忘れない。これが岸さんのサービスの素晴らしさだ。

 

おっ、そろそろ今宵もお暇せねばならない。最後の一杯は

 

カクテルのスタア、マーティニで締めるとしようかな。

 

 


「スタア・バー・ギンザ」

 

東京都中央区銀座1-5-13

 

三弘社ビルB1F

 

03-3535-8005

 

http://www.starbarginza.com/

 

最寄り駅

 

JR有楽町・地下鉄銀座駅から徒歩7分

 

地下鉄銀座一丁目駅から徒歩2分

 

お店一口メモ・・・

 

銀座のバーに通い慣れた方から

 

まだ一度も足を踏み入れたことの無い方まで

 

幅広い客層を満足させる素晴らしいお店です。

 

満席の場合も多いですのでお店へ向かう際には

 

あらかじめ電話にて席を確認した方が良いですね。

 

「岸スタイル」と呼ばれる優雅なシェイキングを

 

是非一度ご覧頂きたいと思います。