Compass №100

「The Blarney Stone」


 

「雄弁」

 

かつては「陸の孤島」とも揶揄された麻布十番も

 

地下鉄駅誕生とともに賑やかな繁華街となった。

 

毎年8月に行われる「麻布十番納涼祭り」は

 

何と延べ20万人もの来場者数を誇っており

 

歩くのも大変な一大イベントと化している。

 

この街にある一軒のアイリッシュパブのドアを

 

ゆっくりと開ける。店名は「The Blarney Stone」。

 

アイルランドにはブラーニーという村があり、

 

15世紀に建てられた高さ26mの有名な城、

 

「ブラーニー城」が観光スポットとなっている。

 

その城壁の頂上部にある石が「ブラーニーストーン」。

 

この石にキスする者は誰でも「雄弁」の才能を得る

 

という伝説があることで知られているのである。

 

この伝説の石の名を持つカウンターに立つのは

 

麗人チーフバーテンダー、越智さおり女史。

 

スレンダーという言葉がよく似合う越智さんは

 

偶然にも私と同じ北海道札幌市のご出身であり

 

大変親しみやすい接客で外国人もふらりと

 

ストゥールに座り笑顔で気軽に話しかけてくる。

 

しっかり者の越智さんは麻布十番をはじめとする

 

多くのバーテンダー達からも頼りにされる存在だ。

 

天井も高く開放感がある空間内のバックバーは

 

石と鏡のコントラストが印象的でとても美しく

 

どことなく古代ギリシャ神殿を彷彿とさせる。

 

ストゥールに腰掛け、まずはノドを潤そうと

 

オーダーするのはもちろんドラフトのギネス。

 

大変クリーミーな泡とビール本来の苦みは

 

ちょっと疲れた身体に心地よく染みわたり

 

一日の疲れもこれで吹き飛ぶというものだ。

 

 


「管理」

 

テーブル席側にある大型TVではWWEが

 

放送されており試合を観ながらキルケニーを呑む

 

大柄な外国人男性や、入り口付近に設置された

 

エレクトロニックダーツを楽しむカップルなど

 

それぞれが「酒場」を自由な形で楽しんでおり

 

いつものオーセンティックバーとはまた違った

 

ユルイ雰囲気の中でお酒をゆっくりと愉しむ。

 

私の隣に座った短髪の男性が実に旨そうに

 

ビールを呑んでいるのを見て思わず話しかける。

 

「ビールをこれだけ旨そうに呑む方はいないすよ」

 

「いえいえ、あなたも相当呑み慣れていますね」

 

そんな話をはじめた相手は現在最も注目されている

 

ビールとも言える長野・佐久「よなよなエール」の

 

東京ご担当である小泉信和氏だったりして驚く。

 

「よなよな」といえば世界4大ビール品評会のひとつ

 

「インターナショナル・ビア・コンペティション」の

 

「アメリカンスタイル・ペールエール」部門では

 

6年連続で金賞を受賞するという快挙を成し遂げた

 

香り佳くコク深いフルーティーなリアルエールであり

 

そのファンは現在もどんどん増え続けている。

 

The Blarney Stoneではこのビールを専用サーバーにて

 

キッチリした温度管理の下にお客様へ提供しており

 

このビールを目当てにお越しになる方もいるそうだ。

 

よなよなエールの醸造元ヤッホー・ブルーイングは

 

ハンド・ポンプから注がれるこの熟成ビールを

 

信頼するお店にしか出荷しないシステムを取っており

 

まさに大切な自分の子どもを預けると言えよう。

 

だから越智さんの確かな知識とその長い経験から

 

小泉氏も安心してこのビールを託すに他ならない。

 

バーでのこんな素敵な出会いをこれからも

 

ずっと大切にしていきたいと思う夜である。

 

  


「The Blarney Stone」

 

東京都港区麻布十番2-5-9

 

03-3746-1182

 

http://www.bstoneazabu.jp/

 

最寄り駅

 

地下鉄麻布十番駅より徒歩5分

 

お店一口メモ・・・

 

ビール片手に会話を楽しむ外国客も多く

 

フレンドリーな空気いっぱいのお店です。

 

深夜になるほど常連さん達で賑わいますので

 

アイリッシュパブが初心者の方でしたら

 

ハッピーアワーもある早い時間がオススメ。

 

若い女性同士のお客さんがチキンソテーに

 

キルケニービールというような組み合わせで

 

ゆっくり会話を愉しむ姿も見受けられます。

 

カクテルも充実しておりますのでビールは

 

苦手という方でもどうぞご安心下さい。