「幻の桜」


「幻桜」

 

 高級料亭や高級クラブが建ち並ぶ銀座八丁目。

 

不景気になろうともこの「銀座村」の灯だけは

 

絶えることなく輝き続けている。

この場所のとあるビル地下に

 

巷で噂のバーが引っ越してきた。

 

「まぼさく」の愛称でお馴染みの「幻の桜」である。

 

オーナーの飼猫が描かれたイーゼルを目印に

 

とあるビル地下へ続く階段をゆっくりと下り、

 

他のバーではあまり見かけないタイプの

 

高さ2m厚み6cm重さは100キロもあるという

 

楢製一枚板のバードアをゆっくり開けると

 

前方に縦長く続いた店内は黒色の壁が妙に心地よく

 

何となしにその壁を少し触ってみると

 

スウェードレザーを使用していることが分かる。

 

左右にスラっと伸びた3枚板のバーカウンターも

 

同一の一本木を使用した手作り感溢れる

 

止まり木に仕上がっており

 

オーナーのセンスの良さが伺い知れる。

 

バックバーには大変貴重なお酒、

 

そして王朝物を含めた大変貴重な

 

グラス達が待ちかまえており洋酒ファンなら

 

否応なしにも気持ちは高まって来るであろう。

 

このお店は今から約10年ほど前に

 

世田谷区三軒茶屋にオープンし

 

当時から洋酒通や他店バーテンダーが

 

足を運ぶBarとして長年愛されてきた。

 

一時銀座五丁目の小さなスペースで

 

営業なさっていたのだが

 

この度満を持してこの場所に移転。

 

個性溢れるバーが数多い銀座八丁目に

 

また一つ注目すべきバーが誕生することになった。

 

 


「味有」

 

手作り感溢れるバックバーを眺めると

 

クリステイーズやサザビーズなどヨーロッパを中心に

 

世界各国オークションで落札したという

 

一般にはなかなかお目にかかれない

 

貴重なお酒達が目に飛び込んでくる。

 

禁酒法時代をかいくぐったバーボンやカナディアン。

 

1世紀物のカルバドゥス、シングルモルト。

 

黄金色をしたシャリュトリューズ修道院で作られた

 

19世紀物のシャリュトリューズ。

 

そして大正時代に製造された至極のジンである

 

オールド・イングリッシュ・ドメスティック・ジン1919。

 

料理コミック「クッキングパパ」主人公の荒岩さんを

 

どことなく彷彿とさせる若き店主であり、

 

「法律通り20歳からお酒を飲み始めました。」という

 

オーナーバーテンダー井口さんは私にこう話す。

 

「味のあるお酒を提供していきたい。」

 

昔は良かった・・・とは、良くある話だが

 

例えば革製品。

 

ヴィ○ンや、エ○メスなど

 

高級ブランドバッグを持ち歩く姿を

 

このお店のある銀座界隈では

 

特によく見かけるが、

 

現在これらの商品は工業化の波には勝てず、

 

部分的に工場にて生産される。

 

しかし、元をたどればこれらも

 

昔は職人の手で一つ一つ手縫いで丹念に作られ

 

その品質は何年使えどもシッカリとした傑作品であり

 

同メーカーの製品を比べても前述の現在の製品とは

 

比べものにならない程 完成度に差が生じている。

 

お酒にしても同様であり

 

現在日本で飲む洋酒のほとんどがその酒造行程の

 

大部分が機械による生産であり

 

原料に関してもコストダウンのために

 

色々なものがその行程で加えられてしまい

 

そのお酒が本来持ち合わせいた純な味わいや香りを

 

失いつつあると氏は言う。

 

その酒造方法によるお酒はある意味では

 

本来のそのお酒自体の味わいが

 

既に無いのかもしれない。

 

井口さんが追求しようとする「味のあるお酒」の意味とは

 

誤魔化しの利かない「本物」 ということを指している。

 

 


「幻の桜」

 

東京都中央区銀座8-7-20

 

ジョイビルB1F

 

 03-3574-8723

 

最寄り駅

 

JR・地下鉄新橋駅より徒歩5分

 

お店一口メモ・・・

 

値段は1ショット(30ml)

 

約2,000円~11,000円

 

ハーフショット売りもしていただけます。

 

チェイサーに使用するウォーターも

 

富士山をはじめ名水をわざわざ

 

取り寄せていらっしゃいます。

 

またグラス類も貴重なアンティーク物ばかり。

 

井口さんがご本人が結婚したあかつきには

 

是非記念に開封したいと語る

 

世界に数本しかない「シャリュトリューズの

黒」。

 

一体どのような味わいなのでしょうか。

 

※大変残念ながら一時閉店なさっております。